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賢い利用法

しくみを知って賢く利用する

基本サービスのコンセプト、ハードは私たちのサービス利用に楽しみの幅をもたらしてくれたが、しくみを知ることは楽しみよりも実益を受けることを可能にしてくれる。
しくみには、基本サービスを盛り上げ、より良く提供するためのしかけや、基本サービスを提供したあとのフォロー、アフターサービスなどがある。

デパート業界で1、2を争う競争力を持つ伊勢丹は顧客満足重視の姿勢に定評がある。
基本サービスは入店しているブランド、品揃えなど全く不備を感じさせず、ハードは天井高から通路の幅、導線、雰囲気など完全であると言っていいだろう。

その伊勢丹では、サイズの大きなレディースウェアのセクション(伊勢丹ではお買場という)で、長身の女性客が恥ずかしい思いをせずに買い物ができるように長身の接客者を当てている。
同じようにサイズの小さいレディースウェアのセクションは背の低い接客者が担当する。

また、新宿店では購入したジーンズの裾上げがわずか15分で完了する。
これを知っていると知らないとでは、上手な買い物や休日の時間の使い方に大きな差が出ることは明らかだ。

極めつけはカスタマーアテンダントというしくみで、半日、または1日付きっ切りで買い物のアドバイスを行う専属の接客者を六人用意している。
6名はいずれも商品や見立てに通じたベテランであり、予約を必要とすることを除けば購入するかどうかを問われず、しかも無料で誰でも利用することができる。
豊富な品揃えの伊勢丹で、ベテランの知識を利用することができることを知っているということは、お客にとってかなり好条件でサービスを利用することができるということである。

他にも高級ホテルでは1万円程度多く支払うことで専用のクラブフロア・クラブラウンジを利用できることがあり、航空会社もビジネスクラス以上のチケット購入者は、空港で専用ラウンジを利用することができる。

それほど料金を必要としないものには、たとえばコミュニティがある。
メンズの靴を販売するベルルッティでは、靴の購入者に対して定期的にオリジナル靴の磨き方の講習会(お客はおそらく横のつながりを広げる目的を持って参加)を開催している。
ベルルッティではコミュニティ以外のしくみもあり、靴を購入してから一定期間が過ぎると新品の靴ヒモが送付されてくる。

裏メニューというのもお客の心をくすぐる実益がある。
たとえば東京のある高級ホテルに併設された中華料理店では、メニューには載っていないが高級感には少し欠けたイメージのある坦々麺を用意してくれる。
料理人が最高の腕を振るっているので、味は保障つきだ。

サービス提供者の事情

私たちが上手くサービスを利用する技術として、基本サービス、ハード、しくみを見てきたが、注意しておくポイントもある。
特に強いブランドではないサービスを利用する場合は気をつけておきたい。

サービス提供者からすれば、サービスにとことんこだわり、力を注いでハードやしくみを作り、基本サービスを正しく提供することは不経済である場合もある。
ということは、収益効果の高いことを優先して行うということになる。
これは何も悪いことではなく、サービスをよりよく利用してもらうために行うのだが、その方法には私たちが知っておくべき特徴がある。

まずトータルサービスとして、ハード、しくみ、接客の順でコストがかかるという現実がある。
この特徴はしかし、逆順の接客、しくみ、ハードの順で容易に実行できるという特徴を併せ持つ。

たとえば駐車場というハードを併設したスーパーは、コストが大きくかかる一方で一度作ってしまえば手間をかけて維持する必要はない。
反対に、靴を提供するベルルッティのように、お客のコミュニティを作るとき、サービス提供者は時間と人員と手間を割かなくてはならない反面、コストをかけずに手早く行うことができる。
しくみはその中間にあるもので、たとえばポイントカードを発行する場合、手間はコミュニティよりも少なく、コストは駐車場よりもかからない。

私たちがトータルサービスに注目するときは、やはりハード、しくみ、接客というコストのかかる順番が、メリットの大きい順番であることを覚えておいた方がいい。
したがって、手間のかかる接客中心のトータルサービスを行っているサービスでは、そのお得なしかけが効用に合っているかをよく検討して利用するようにしたい。

強いブランドのサービスを賢く利用するウラ技

強いブランドのサービスは、トータルサービスを理解することでより賢く利用することができる。
しかし、様々なストーリーやどのようなしくみがあるのかを全て把握するのは少し無理があるし、時間もかかる。
時間をかけてでも上手く利用した方がいいサービスはあるだろう。
そのようなサービスではベテランの接客者に直接話を聞いてみたり、関連本を読んでみることで理解は深まる。

しかしそもそも、「強い」ブランドなのか、「強く見える」ブランドなのかを見誤ってしまうと、その後にトータルサービスを知ろうとする努力は無駄になってしまう。
「強く見える」ブランドのサービスを深く知ったところで、さほど楽しみも実益も生まれない。
そこで、強いブランドであるかどうかはともかく、強く見えるだけなのか、地味だけど強いブランドである可能性があるのかを見分ける簡単な方法がある。
それがフランチャイズと人材派遣に注目することである。

フランチャイズ展開を行うということは、急速に商売を拡張する正しい方法であり、特段否定することではない。
サービスにおいても、基本サービスとしくみがしっかりしている上に、ハードが統一されるからこそフランチャイズは可能になる。
しかし、である。
「チェーン展開自体を目的」にしているサービスを除けば、強いブランドはほとんどフランチャイズを行わない。
ファッションブランドであればライセンス販売を行わない。
たとえば前者はスターバックス、後者はルイ・ヴィトンである。

逆説的に考えてフランチャイズ展開をしているサービスは、サービスコンセプトを姿勢とするよりも商売上の展開が優位にあり、仮に知名度が高くてもサービスブランドは強くないと考えることができる。

同じように、サービス事業の運営を人材派遣に頼っているサービスは、「強く見える」可能性がある。
中にはもちろん、ブランド力のあるIT企業のアフターサービスであるコールセンターに人材派遣を利用している場合もある。
しかし通常人材派遣を通じて運営しているサービスでは、サービスコンセプトの理解が従業員に行き渡っていないと考えることができる。

従業員、特に接客者の自社理解、サービス理解が欠如していると、そのような接客者からサービスを受けるお客は、いつまでもサービスコンセプトを理解することができない。
お客が理解できないということはブランドが作られないということである。

フランチャイズと人材派遣。
この2つに注目することでブランド力のあるサービス(トータルサービスが完全なサービス)であるかどうかの目安をつけることができる。

トータルサービスを見る目は、サービス感性を高める

基本サービスをはじめとして、トータルサービスを作るハード、しくみ、接客を良く知り、経験することで賢くサービス利用することができるようになると、サービス感性が高まる。

サービス感性が高まれば、サービスを受ける前からある程度どのようなサービスを提供されるかがわかるようになり、お得なしくみを早く見つけることで上手くサービスを利用することができるようになったりする。
サービス感性を高めることで、サービスのツボを押さえ、賢く利用してほしいと思う。

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