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2種類のコンセプトを作る

コンセプトのスタートライン


サービスコンセプトの出発点は2つある。

ひとつはマーケティングリサーチからスタートすることで、シャネルの「女性の解放」が当時の女性の服に対するニーズを捉え、その思いを反映したように、あらかじめマーケティングされるサービスを意識して作る。

しかしそれだけで選んでしまうと、単なる妥協のサービス選びとなってしまう。

そこで、サービスコンセプトを作る立場にいる人の夢やわがまま、思い込みがもうひとつの出発点になる。
これが、情熱を込めてコンセプトを守り、サービスをを継続的に提供できるようにする。

基本コンセプトのレシピ

コンセプトをうまく作るためにはまず、基本コンセプトを決める必要がある。

基本コンセプト作りは極めてシンプルである。
そのサービスが、何の業界に属するかを一般常識に従って決める。
または「道路を作っています」「コーヒーを提供しています」「クリーニングです」など、最もシンプルに表現することのできるものが基本コンセプトになる。

基本コンセプトを決めるとき「何業とは言えません。私達は文房具を扱いながら、それを宅配するという新しい考え方を行います」としてはならない。
基本コンセプトはシンプルでわかりやすいもので表現する。

個別コンセプトのレシピ

基本コンセプトが決まると、個別コンセプトを決める。
これは少なからず時間がかかる。

まずお客の声に耳を傾け、マーケットを見るというマーケティングの仕事が必要になる。
そこで求められるものを明らかにしておく。

その上で、サービスコンセプトを作る人の情熱やこだわりを形にする必要がある。
そのために必要な基本的な考え方が「経験」「観察」である。
「経験」と「観察」によって個別コンセプトをはっきりとした形にする。

人の脳は目の前の物事に対して、自分が過去に経験してきたことに当てはめ、それがどのような意味を持つかを考えるようにできている。
言い方を換えれば、自分が見て、聞き、匂い、味わい、感じたこと以外のことを正確に考えたり、伝えたりすることはできないということでもある。

個別コンセプトを決めるときに大切なのは、過去に自分が体験してきたサービスの経験を中心にするということにある。
良いと感じたこと、悪感情などが「経験」としてコンセプトの土台を作る。

しかしベテランの接客者のような経験は必要ない。
逆にベテランであると、業界の常識に縛られて自由な発想ができなくなってしまうこともある。
強い疑問を抱き、具体的な解決策を考えたという経験があれば、それが個別コンセプトを作ることを可能にしてくれる。

経験した強い疑問を、具体的に解決する手段が「観察」である。
経験から生まれた疑問に対して、同業、他業を問わず、自分の中のコンセプトを形にするために必要な答えを探し出す必要がある。

たとえば青山と麻布十番に店舗を構え、1週間先の予約を取ることが難しい盛況のリゾートレストランがある。
その名称が示すとおり「リゾート」にイメージされるコンセプトをいくつも取り入れている。
そのレストランで食事を行うと、リゾート地のゆるやかな雰囲気を楽しめるだけではなく、料理はもちろん非常に気配りのできた接客によって満足の時間を過ごすことができる。
このレストランのコンセプトは事業をはじめた3人の観察によって決められた。

レストランオーナーは海外の高級リゾート、ホテルなどを中心に、お客の立場としてサービスを経験することに多額の自己資金を投資した。
利用者としてのプロを目指した。
「観察」は実行動を伴い、新しい経験を増やすことで自分の中に眠るコンセプトを具体的に固め、一致するものを取り入れた。

他の2人は、アメリカとヨーロッパを数ヶ月かけて旅した。
既にレストランの接客とマネジメントに関する専門家であるにもかかわらず、「観察」のために時間とお金を費やした。
コンセプトのヒントを得るため、時間をかけて高級レストランから街のカフェまで渡り歩いた。

こうして必要だと思われた反映すべきコンセプトが持ち寄られ、選別され、統一され、リゾートレストランのコンセプトが形作られた。
このレストランの個別コンセプトは「わがままなお客様こそレストランの楽しみ方を知る上級者である」であり、コンセプトを追及するサービスを毎日提供している。

観察は、経験の中に眠っている強い疑問の答えをこのように導く。
そしてリゾートレストランの例は、答えが出るまで観察を行い、最初に完全な個別コンセプトを作るということがいかに大切であるかということを私たちに教えてくれる。

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