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2種類のコンセプトを作る

コンセプトを固める3つの方法 「1.今あるものをさらに良くする」

「1.今あるものをさらに良くする」

アメリカの航空会社サウス・ウエスト航空が、「今あるものをさらに良くする」という考え方のヒントを与えてくれる。

サウス・ウエスト航空の基本コンセプトは「航空会社」であって「飛行機を飛ばすことで人を移動させること」である。

個別コンセプトは「型破り」「楽しく」「従業員第一」などがある。
従業員が物入れからパフォーマンスたっぷりに登場することが許されている。
機内アナウンスもお客が笑えるようなジョークが飛び交う。
彼らにはそうすることの権限委譲がされており、それらのユーモアたっぷりのサービス提供は従業員に任される。

これは画一的なサービスを提供するアメリカの航空業界に対して「型破り」「楽しく」「従業員第一」という個別コンセプトを盛り込むことで、今あるものに変化を生じさせたケースである。
これまでのサービスに不足があったわけではない。
しかしそのサービスを土台として、新しい発想を加えることでさらに良くしようという考え方である。

航空会社には「今あるものを更に良くする」というコンセプトがよく見られる。
ヴァージン・アトランティック航空はイギリスの航空会社で、航空会社の中では最も早くエコノミークラスの全席に個別のテレビモニターを導入し、個別コンセプトを反映した。

羽田―北九州間に路線を開拓したスター・フライヤーは、エコノミークラスの全席に世界で最もゆとりのあるラグジュアリーなシートを導入し、機体を世界初の黒で染めることでコンセプトを反映している。

これら航空会社の個別コンセプトをヒントにして興味深いのは、「今あるものを更に良くする」という方法そのものが個別コンセプトになっているというところにある。

今日のお客をどうやって驚かせようかと考え実行すると、その方法は明日には古くなってしまう。
エコノミークラスに個別モニターやラグジュアリー・シートを導入しても、他社も導入すればすぐに珍しくも何でもなくなってしまう。

シャネルの「女性の服の解放」も同じ意味がある。
つまり、次はどのようにして「良くしていくか」ということを反映することに終わりはない。
これが「今あるものを更に良くする」という方法でコンセプトを形作るときの特徴である。

「2.今ある者を組み合わせ新しいものを生み出す」

「明日」「ペン一本が」「足を運ばなくても手に入る」というサービスを展開しているアスクルなどの文具提供サービスは、既にあるものを組み合わせる個別コンセプトがある。

今も昔も、文具店と配送業は珍しいものではない。
しかしアスクルは両者を組み合わせることで、新しいコンセプトを生み出すことに成功した。
そのコンセプトはアスクルが行うまで誰も気がついていなかった。

今あるものを組み合わせるという考え方は、実は発明によく用いられる。

エジソンがかつて電球を発明したときのような観察と実験、試行錯誤を繰り返すという方法を取り入れることで、個別コンセプトを生み出すことができる。

この方法で個別コンセプトを決めるなら、特に「観察」が重要になる。
ひらめきを得るためにも、組み合わせるものが何であるかを知るためにも、「観察」なくして個別コンセプトを生み出すことはできない。
観察のない組み合わせは単なるアイディアであり、ただの思いつきでしかない。

組み合わせは事業の組み合わせでなくてもいい。
発想の組み合わせという場合もある。
たとえば3Mの開発したポストイットは、人々の生活を根本から変えた。

3Mは風通しのいい会社としてよく知られているが、それでも発明が商品に結びつくことは300回に1回程度であるという。

ポストイットはその中でもはじめ「失敗作」として扱われ、商品化されない予定だった。貼り付けるためのテープの開発を行ったにもかかわらず、簡単にはがれてしまう粘着テープができた。
「簡単にはがすことができる」ということと「その使用方法」の組み合わせが、新しい可能性を生み出すことに気がついたとき、そこに新しいコンセプトが生まれた。そしてポストイットが誕生した。

発想によって組み合わせを行うときは、観察と共に常識に左右されない柔軟な発想と頭の柔らかさを持つようにしたい。
可能性は無限で、しかも強い個別コンセプトを生みだすことができる。
そのコンセプトを核とした、オリジナリティの高いサービスを展開することができる。

他にも「新しい技術との組み合わせ」という考え方もある。
証券サービスとインターネットを組み合わせた松井証券や、発光ダイオードを信号機に取り入れた公共サービスも組み合わせを考える上で大きなヒントになる。

「3.今はなく、想像すらできないものを生みだす」

例に挙げたリゾートレストランが、このケースの代表例である。

このレストランは、普通の高級レストランと価格帯が変わらないにもかかわらず、初めて訪れる人ですら時間を忘れて思わず居続けてしまうような、リゾート気分のレストランはこれまでなかった。
業界では通常食事は長くても2時間、レストランは回転数によって収益を生むという常識がある。
この常識を180度変えたのは、このレストランのコンセプトがレストラン業中心ではなく、コンセプト中心で形作られているからである。

今ないものを生み出すためには、経験と観察だけでは十分でない。しかし、多くの人が考える「創造力」は必要としない。
必要なのは「取り入れ」「研究開発の成果を反映すること」にある。

「取り入れ」というのは、日本人が得意な方法である。
古くは漢字を取り入れながら仮名を残し、両方を組み合わせることで独自の文化を築いたことや、明治維新に見られる急速で浸透度合いの高い近代化などがある。
スターバックスは「取り入れ」の実例として好例である。

スターバックスの会長ハワード・シュルツはイタリア旅行の際、人びとが仕事前にカフェでエスプレッソを一杯ひっかけてから出勤する光景を目にする。
そして自らエスプレッソを飲み、なんて美味しいコーヒーだろうと感激する。

コンセプトに必要なストーリーはたったこれだけである。

シアトル系コーヒーの定着する以前のアメリカでは、薄くて不味いコーヒーが当たり前であった。
この常識に対して、イタリアで日常飲まれているエスプレッソベースのコーヒーを取り入れることを決めた。
これが「取り入れ」によって個別コンセプトを決める方法である。

イタリアにはエスプレッソベースのコーヒーがあった。
ラテもカプチーノもあった。
あったというよりは、日本人がお茶を飲むのと同じくらいに当たり前のことだった。

一方アメリカでは、薄くて不味いコーヒーが当たり前だった。
当たり前の世界に、別の世界の当たり前を「取り入れる」
これが取り入れによる「今は全くなく、想像すらできないものを生み出す」個別コンセプト構築である。

「研究の成果を反映すること」で生まれる個別コンセプトは、独自に開発した新しい知識や技術、商品をそのままコンセプトとして反映する。

グリコのポッキーが商品開発されたとき、世の中ではじめて手を汚さずにチョコを食べることができるようになった。
子供はポッキーの柄の部分まで食べることができ喜ぶ。
母親は、子供が手を汚さずに食べることのできるチョコが開発されたことで、手を拭いたり汚れたことを叱ったりする必要がなくなった。

ポッキーは単体では単なるチョコレートという商品でしかないが、商品が提供されたときその効用がサービスとして同時に提供されるようになった。

この場合は、ポッキーが提供する「子供の手を汚さない」「全部食べることができる」「母親の不満を取り除く」などが個別コンセプトになる。

研究の成果をコンセプトとして反映するとき、個別コンセプトがしっかりと決められていてもサービスを受け入れてもらうことが難しいことがある。

大塚製薬がファイブミニを開発したとき、人々には食物繊維が便通を良くするという知識がなかった。
たとえ個別コンセプトを「便通の改善による健康促進」と定めても、それを知らない消費者に受け入れてもらうことが困難だった。

つまりマーケティングされたサービスではなかった。
お客に新しく受け入れてもらうことでしかサービスを提供できないとき、眠っているマーケットを開拓するか、新しく創造することでしかサービスは利用してもらえない。
サービス提供よりも先に、マーケティング活動が必要になる。

大塚製薬は商品よりも先に、食物繊維の重要性とその効果を広めることに力を入れた。
そして充分に知識が広まったところでファイブミニを提供し、現在でも提供され続けている。

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