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接客の本質

サービス労働者と知識労働者

接客の仕事は、母体となるサービスが何であるかによって、接客者に求められるものがサービス労働に近いか、知識労働に近いかを決める。

しかし接客者当人からすれば、接客力を高めるためには知識労働者になっている必要がある。
ひらがながスペースキーを押すことで漢字に変換されるのと同じように、接客者もサービス労働者から知識労働者に変換される必要がある。

「樹木」という字は、ひらがなであれ漢字であれ、発音も意味も同じである。
しかし漢字になることで視覚で意味を伝える。
より高度な特性を持つ。

さらに、使い手にも受け手にも、漢字を理解できる前提を必要とする。
より高度な関係を必要とする。
接客の知識労働への変換は、ひらがなを漢字に変換することと同じ意味がある。

ではサービス労働者、知識労働者とは具体的に何を指すのか。

サービス労働者というのは、サービスを構築する仕事と提供への道筋を作る仕事、提供する仕事を行う人のことを指す。
サービスを構築する仕事は、たとえば料理人、工場労働者、出版社の編集者などがある。
ほとんどの場合サービスとして提供するモノをつくる仕事に携わるので、厳密には接客者ではないが、サービス労働者ではある。

サービスを提供する道筋を作る仕事は、レストランのウエイター、航空会社のスチュワーデス、映画館の入場係や、カスタマーサポートセンターの電話受付係などがある。
サービスは接客者から直接提供されるのではなく、料理、飛行機、映画を通じて間接的に提供される。
電話サポートはたとえばサービスとして提供されたPCに対するサポートとして、PC購入後にトータルサービスの一環として働く。

サービスを提供する仕事は、ジムのインストラクター、カウンセラー、コンサルタント、弁護士、美容師などが技術を通じて接客を行うとき、その行為がイコールサービス提供になることをいう。
ほとんどの場合、商品は無形であり提供者個人の知識によってサービスは提供される。
しかしこの時点ではまだ知識労働者ではない。

サービス労働者の条件は、5つある。

第1に、事業の決まりごとを実行する役目であること。
第2に、事業で求められる知識を、事業が求める範囲で提供すること。
第3に、労働によって事業に貢献すること。この労働には知識も含む。
第4に、サービス労働者として熟練するには、スピードと確実性が求められること。
第5に、同様にサービス労働者としてより事業に貢献するには、求められる役割の量、深さが重視されること。つまり経験と実績が重要であること。

これら5つがサービス労働者として仕事を行う者の特性である。

知識労働者とは何か。
知識労働者は事業の一部として知識を使う仕事を行う(サービス労働者)のではなく、知識で事業を支える、あるいは作る仕事に就く者のことを指す。

たとえば飲食店の法務を支える顧問弁護士は知識労働者である。
その知識で飲食店という事業を作り上げる一部になる。
同じことは税理士、社会保険労務士などの士業にもいえる。

あるいは、その飲食店で、メニューの変更をどの頻度で、どのような料理として提供するのかを決めるチーフコックはやはり知識労働者である。
(ただし、この場合は接客者ではない)

仕事の熟練、コミュニケーション力の発揮、ホスピタリティの発揮などを行う者はサービス労働者である。
一般的な接客者がサービス労働者であるか、知識労働者となりうるかを分けるものは、コンセプトの反映ブランド構築ができる人材であるかないかによる。

つまり事業の根本的な存在意義であるコンセプトの反映という作業を理解し、正確に提供でき、提供方法を改善することでさらに良くし、新たな反映方法を構築し、満足のいく成果を出せる者は知識労働者だといえる。
その行為によって事業を支えている。

同じように、そのコンセプトの反映を顧客に理解してもらう能力のある者も知識労働者である。
ブランドはコンセプトの反映とお客理解の一致によって作られる。
顧客にサービスではなく、ホスピタリティでもなく、事業のコンセプトを理解させることのできる接客者は、その行為で事業を支える。
これができる者は知識労働者である。

あるいは事業に対する顧客の信頼性を高めることのできる接客者は知識労働者である。
これはコミュニケーション力が高いことも、ホスピタリティの接客ができるということでもない。

サービス提供で顧客の信頼を高める機会は、実は2つしかない。
ひとつはブランドを構築する場合で、これは既に書いた。
もうひとつは、クレームという機会に信頼を高めることのできる場合である。
クレームは苦情であると捉えられ、通常はその通りだけれども、クレームを機会として考えたとき、実は信頼性を以前よりも高めることにしか意味がない。
他のクレーム対応は全て問題解決である。

クレームの機会に、これまで知ってもらうことができなかった信頼性を顧客に理解させることができる接客者は知識労働者である。
さらに、クレームの機会は別の知識労働者を生みだす。
悪質なクレームを減らすべく良い接客を行うことは、まだサービス労働者の行うことである。
しかし、良質なクレームを増やす(親しい友人がためらいがちに、しかし相手のことを思ってはっきりと言うべきことを言うようなクレーム)ことのできる接客者は知識労働者である。

さらに、接客者が知識労働者となる別の切り口がある。
卓越した専門技術力
を持つことである。

一般的に通常の美容師はサービス労働者である。
髪のカットを提供し、事業の枠組みの中で仕事を行う。
しかし、たとえば国際的な賞を取る技術力の持ち主は、その卓越した技術によって事業のブランドを左右するほどのインパクトを持つ。
事業の枠組みで髪をカットするのではなく、その接客者をして事業のカラーを決める。
つまり事業を支える接客者という意味で、知識労働者である。

知識労働者は一般的に卓越した技術力によって、独立することができるレベルであると思われているが、必ずしもそうではない。

少なくとも接客では、

第1に、コンセプトを反映することができる。
第2に、ブランドを構築することができる。
第3に、クレーム(とブランド構築)から事業に対する新たな顧客の信頼を生みだす。
第4に、悪質のクレームを減らし、良質のクレームを増やす。
(これら4つは独立を可能とするものではない)
第5に、卓越した技術力。

の5つがある。
これは知識労働者の条件であり、同時に特性となる。

またこれらの条件を満たす者で、教育者としての実力がある者は、社内教育を行うことができる。
これが接客での第6の知識労働者の条件になる。
このレベルの社内教育者も、社内教育によって事業を支えている知識労働者である。
仕事とスキルを教える社内教育者はサービス労働者である。

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