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賢い利用法

ブランドに傷がつかない理由

ブランドが、お客による強力な理解によって支えられていることが、母娘の経験を考える重要なポイントになる。
幸か不幸か、既に作られた強いブランドによる接客のミスは、ブランドが強ければ強いほどサービスに悪影響をもたらさない。
そのメカニズムはこのようになっている。

本来であれば信用を失うはずの母娘の経験が強いブランドを揺るがさないのは、接客対応の不備が、ブランドの一部分に与える影響でしかないことにある。
製品に対する信用、店舗の雰囲気に対する信用、アフターサービスに対する信用など、様々な信用の量と質による強力なブランドが作られている場合、利用者の心理に「不信を抱くには十分ではない」「利用しないとまでは言わない」という判断が生まれる。
たった一度のミスによって、これまでに積み上げられた量のブランド理解を否定することが割に合わないと考える。

たとえこの母娘が「もう利用しない」と決定しても、そしてそれを口コミで広めようとしたとしても、他のお客にとってはせいぜい参考程度の一意見にしかならず、悪影響を与えることには結びつかない。
ひとつのサービスミスが、ブランド理解を覆すまでに至らないからである。

接客は本来、ブランドを形作るひとつの要因であり、しかも入り口に位置する重要な要因で、サービス提供者にとっては力を入れるべき大切なポイントである。
しかし、強いブランドはお客のハードの理解、基本サービスの理解、しくみの理解に加え、他のすばらしい接客の理解に支えられているので、数度の不備程度ではお客の理解を覆さない。

しかし同じ数度の不備であっても、基本サービスの不備はブランドの低下を招く。
ルイ・ヴィトンであれば鞄への信用が崩壊することは、ブランドが崩れることと同じ意味をもつ。

一貫性の法則と認知的不協調和

強いブランドが簡単に悪影響を受けない理由はまだある。

社会心理学では人が影響を受けやすい心理状態に陥る前提として、継続と反復が理由になることがあるとしている。
これを一貫性の法則と呼ぶ。

そして人は失敗するはずのない物事で失敗してしまったとき、失敗そのものを認めない心理になることがある。これを認知的不協調和という。

たとえば、新興宗教にはまってしまったある人は、その宗教の教えを心から信じ、熱心に活動すればするほど、その宗教を否定することができなくなる。
たとえ多少の不祥事があろうとも、そのような不祥事を正し、これからますます発展していくように活動しようとする。
これが一貫性の法則である。

さらに不祥事程度の物事ではなく、教団が社会的犯罪を行ったり、教祖のインチキが明るみに出てしまったりしたとき、熱心な信者は「これは神が我々に与えた試練だ」などとして起こったことを見なかったことにすることがある。
あるいは「正しい部分もある」として正当化しようとすることがある。
このような心の動きが認知的不協調和で、これまでの努力や苦労を否定し自分が愚かであったと認める痛みと、このまま信じて継続する痛みを天秤にかけ、過去を否定しない選択を行うのである。

ブランドもこの2つの心理のメカニズムによって支えられている部分があり、これもまた、数度の接客の不備では強いブランドを容易には崩壊させない理由となっている。

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