Esmose

コラムを読む

ブランド作り

ブランド促進の歯車を回す 継続で生まれる強いブランド


ブランド作りと促進は、必ずしも同じではない。
ブランドの作りのほとんどはハードと接客にコンセプトが反映されているかどうかによって決まる。

これに対してブランドの促進に必要なことは、個別コンセプトの反映を強めること、基本サービスを正確に提供すること、接客者のサービス理解、の3つ歯車を回す必要がある。
全ての歯車がかみ合い動力となって働くと、サービス提供者のコンセプトの反映と、お客の理解が広がりを見せるようになる。

ブランド促進の歯車「1.個別コンセプトの反映を強める」

ブランド作りの前提は、全てコンセプトにある。
特に個別コンセプトを徹底的に反映することがブランド作りの基本になる。
個別コンセプトは基本コンセプトよりも個性が強い。
それでも、シンプルな言葉ではっきりと示される。
それは「女性の服の解放」であり、「夢の国」で過ごすことであり、「明日、ペン一本から、配送する」というようなことでもある。

この個別コンセプトの反映に力を入れると、ブランドが強化される。
半年か1年、長くても3年の期間で、定期的にハードと基本サービスを見直す。
それぞれにとって、全体的、部分的に、より個別コンセプトを反映するためには何を行うかを考え、見直し、改善する。
私は7アクトで、3年目に新サービスを開発したとき、これまでカフェでレッスンを行うだけだった生徒が、このサービスを受けた場合、学習の個別カウンセリングを行うためオフィスに来てもらう必要が出た。
そこで、オフィスのレイアウトを一から作り直した。それまでの会議室やパーテーションは全て取り払い、別の場所に移動した。
床のカラーと照明を変え、デスクとイスの全てを買い換えた。
新しい基本サービスを提供するのに適したハードに整え直した。

最もはじめにハード、基本サービスを構築したときから、それをなぜ、どのような理由で作ったのかということを記録して、その記録が現在どの程度の効果を発揮しているか、発揮しているものはなぜ発揮しているのか、成果があいまいなものはどの部分が成功し、失敗しているのか、発揮していないものは排除するのか、改善するのか、様子を見るのか、などを確認して個別コンセプトを再反映するしくみをあらかじめ作っておくといい。

この改善は、現場の事情によってお客の喜びのために偏っていたり、接客者の効率を優先しすぎたりしたものになっていることがよくある。
目に見えた問題がなくても、こういう状態は個別コンセプトの反映上障害になる可能性がある。
このような不備も同時に、提供者のコンセプト反映の改善という視点でもういちど見直すようにする。

そして改善されたら、今回もまた何をどのように考えて改善し、コンセプトを反映したのか、どのような成果を求めたのかということを記録しておく。
成果は数字で表すことのできない定性評価になる。
だから、次回ハードと基本サービスを見直すときに、前回の記録だけが現在の状態と成果を測る唯一の基準になる

ブランド促進の歯車「2.基本サービスを正確に提供すること」

サービスを提供する以上、ブランドがどのような位置にあっても、正しいサービスは提供されるべきだと思う。

コンセプトの反映ととお客の理解は、最初ハードと接客が重要になる。
けれども、ブランドを継続し強化するためには、基本サービスが常に、いつでも、どんなときも、正しく提供されているかどうかにかかっている。
なぜなら、コンセプトの反映とお客の理解を一致させようと思ったら、その前提に信頼が必要になるからだ。
人は信頼できない相手を理解しようとはしない。

ハードや接客が悪くても、サービスの効用を必要としていればお客は利用してくれるかもしれない。
しかし、サービスを利用してくれたからといって、信頼もしてくれるとは限らない。
信頼し、信頼してもらうことで理解を一致させるものが、正しいサービスの提供である。

たとえば、日本ではじめてアンパン、ジャムパン、クリームパンを発明し販売した木村屋は、サービス提供に致命的な三度の不幸に見舞われている。
一度目は開業翌年に火災で店が全焼し、その後も関東大震災、東京大空襲で店舗が焼けた。
しかしその度に苦難を乗り越え、建て直し、現在も変わることなくアンパンを提供している。
仮に一時期、何らかの理由でアンパンを提供することができなくなったとしても、必ず復活してアンパンを提供し続けている。
復活する度に必ずアンパン提供を再開する。基本サービスはアンパンであるという、正しいサービス提供を継続している。
万が一また店舗と工場が崩壊するようなことがあっても、木村屋は必ず復活してアンパンを提供するだろう。
木村屋にはそういった信頼性がある。

お客はこの事実を知らなくても、自然と木村屋に対して強い信頼感を持っている。
感覚的にブランドを感じている。
木村屋に信頼を寄せているので、相手を正しく理解しようとする姿勢が利用者に生まれる。
この姿勢が利用者理解の大きな要素となって、コンセプトとお客を結びつけるようになる。

ブランド促進の歯車「3.接客者のサービス理解」

接客は、特に初期のブランド構築の決定要因になる。
接客が悪いか、コンセプトが反映されていないと、お客はサービスを理解しようとしなくなってしまう。

接客の仕事はサービスを手渡すことにある。
根本的な意味でそれはコンセプトの反映であって、同時にしくみによって形作られるトータルサービスの実行でもある。
しかしこういったことは、単に仕事上のくくりでしかない。
仕事を理解して行動すれば、そしてコミュニケーション力が優れていれば、人に信頼される素晴らしい接客者にはなれるだろうと思う。
しかしブランドを作る接客者になるには不十分である。

正しい接客の仕事は、正しい仕事の理解から生まれる。
そのほとんどは技能やコミュニケーションを含むスキルである。
同様に、正しい接客によるブランドの促進は、接客者による正しいブランドの理解によって生まれる。
それは仕事の内容とは別のところにある。

東京紀尾井町のジョルジオ・アルマーニ本店では、接客者は正しく仕事をする。
その仕事は確実性に富み、利用者は自分の望む状態を得ることで満足して店を後にすることができる。
と同時に、この店では接客者がブランドを構築するのに必要な理解を持っている。

たとえば、ジョルジオ・アルマーニ当人の理解が徹底していし、海外のどの店舗が広い作りになっているのか、その世界順位を把握している。どの店舗にどのような買い物を、いくらの額で行う顧客がいるのかを知っている。
またはミラノのアルマーニショップに併設されたレストランNOBUがどのようなお店であり、どのようなコンセプトを持っているかということを知っている。

こういったことは直接の仕事とサービス提供には関係がない。
しかし接客者としてブランドを維持し、促進するための知識としては必要不可欠な条件になる。
ただ、仕事とサービス提供に関係のないことを幅広く知っていればいいというわけでもない。
これらの知識は、全て個別コンセプトの正しい理解であり、そしてより重要なことは、正しいブランドの理解であるというところにある。
正しいブランドの理解というのは、個別コンセプトとお客の理解の何が一致しているのかを、接客者自身が知っているということである。

このような接客者の知識と理解はブランドを維持し、強くし、促進する。
だからブランドを強くするためには、接客者による「個別コンセプト」「ブランドの正しい理解」が必要不可欠になる。

個別コンセプトの理解は、毎朝のミーティングで取り上げ、課題を話し合い、実例を伝え、方向性を示し、その行いを繰り返すことで深くすることができる。
または、定期的にハードと基本サービスの見直しを行うときや、しくみと接客の改善と更新を行うときに、個別コンセプトを基準に話し合い、決定し、次のミーティングまで実行することで理解につなげることができる。

これに対してブランドの理解は、コンセプトを理解するのと同時に、お客を知らなければならない。
第一に、お客が持っているブランドイメージを正しく理解しなければならず、第二にお客の理解と個別コンセプトの一致している部分を正しく知らなくてはならない。
そのためにはお客をよく観察して、お客の声に耳を傾けなくてはならない。
そしてお客が理解してくれた、前提となったサービスは何(どれ)か?ということも見出しておくことが大切である。

これら3つの理解が正しく行われたら、今度は接客者の行動としてコンセプトの反映と利用者イメージが「一致しない部分」を、一致させるように働きかける。
働きかけの方法は2つあって、しくみと接客を改善すること(内的作用:これでコンセプトを伝えやすい状態を整える)と、お客がまだ知らないコンセプトを伝えることでより深く理解してもらい、正しくサービスを提供すること(外的作用:伝えるポイントを絞り、サービスの約束を守る)」の両方で行う。

この3つの流れをうまく行うことができる接客者によって、ブランドは促進され強くなる。
このような接客者が増えると、比例してブランドは安定し、強くなることでオリジナリティ溢れる唯一無二の存在となっていく。

したがって接客を必要としないサービスでは、条件をひとつ失うという意味で強いブランド作りはやや難しくなる。
この場合は、マーケティングによってブランドイメージを先行させ、興味を持ってもらってからサービスを利用してもらう方法が適している。

余談になるけれども、個別コンセプトを必要としない公共のサービスでは、ブランドは構築されない。
個別コンセプトがないということは、ブランドを作る条件が欠けているということである。
画一的で統一的なハード(たとえば高速道路)と基本サービス(たとえば障害者補助)の提供にはブランドを必要としないという理由もある。

トップに戻るボタン