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プロセスの対策 - 接客

マイナスを挽回する作業

マイナスとは、基本サービスの提供に対して阻害となるマイナスのことである。
このマイナスをもたらす最も大きなものがクレームで、そのクレームに対してしくみの改善では「問題対処」する。

接客でのクレームに対する考え方は「機会対応」となる。
と同時に、接客はしくみを実行することでもあるので、しくみの実行として「問題対処」も行う。
機会対応は社外対応で、問題対処は社内対応(改善)でもある。

社外対応というのは一般的に考えられているクレーム対応であり、CSのことを指す。
接客者は、問題を抱えているサービス利用者に対して全力で「対応」する。
その目的は利用者の「不備の解消」であり、同時に「感情の解消」を行うことにある。
不満足を解消することにはない。
謝罪を行うことでもない。

まずサービス提供の遅れなど、基本サービスを滞りなく提供することでサービス上の不備を解消し、それだけでは補うことのできない利用者の感情的な高ぶりをコミュニケーション、料金対応、追加サービス、謝罪などを使って解消する。
コミュニケーション、謝罪は接客者が直接提供するもので、料金割引や値引き、無料、チケットなどの追加サービスはしくみで決まっていることを接客者が間接的に提供する。

いずれの場合も、どのようなケースに対してどのように対応するかは、しくみによって決められる。

接客者によるクレーム対応は、機会対応である。
起こったクレームを問題として捉えるのではなく、機会として捉え、チャンスを生かすことに対して目的を持つ。
従って対応の前提はポジティブベースであり、ネガティブベースではない。

ネガティブベースというのは、「問題が長引くと気分が悪くなるし、他の仕事が遅れるので早めに終わらせるためにとにかく謝罪する」とするような前提のことである。
クレーム対応に対する前提がネガティブであり、その前提を解消するために謝罪などの接客対応を行うとサービスは上手く機能しなくなる。
なぜなら利用者は、その場の問題をこれ以上長引かせる意味を見出せなくなることで話を切り上げはするものの、サービスの信頼が回復されないままにクレームが終了するからである。

一方でポジティブな前提の全てが良いというわけではない。
一部のポジティブ思考は、ネガティブな前提とは別の理由でサービスをダメにする。
たとえばクレームを機会として、お客と密接な関係を築くコミュニケーションを取る方法が接客者全体に浸透すると、そのサービスは「クレームを出せば、上手く行ってくれるサービス」になる。
このようなサービスは正しいと信じる行動を行うほど、ある日突然わけもわからずに上手く機能しなくなる。

ポジティブな前提とは、利用者に対して「サービスの信頼を確認してもらう機会」のことを指す。

「サービスの提供はひとつでもミスをすると0%であり、完璧に行って当たり前である。だから0%か100%しかない」などと言われることがある。
しかし実際にはミスのないサービスなど存在しない。
人が行い、人に対して行う以上、サービスとミスを切り離して考えることはできない。
このような考え方は現実的ではない。

サービス上のミスをポジティブな前提として捉えることのできる唯一の考え方は、お客が「そのサービスに本当の信頼性があるかどうかを再確認できる」という一点にある。
なぜなら、サービスにミスが起こらず滞りなく提供されているのであれば、利用者は提供者の信頼を確認する必要がないからである。

信頼を確認しなくていい状態というのは好ましい状態といえる。
疑わずに相手を信じることができる関係であることを証明している。
しかし同時に、今信じている以上の信頼性が相手にあるかどうかを知る必要はない、という状態でもある。

クレームは、利用者に対して「今まで知らなかったけども、知っていた以上の信頼性に気がつくことができた」という気づきを与える、数少ない2つの機会の1つである。
(もう1つはブランド理解を深めるとき。利用者がまだ知らないコンセプトを伝えることで新たな信頼性を知ってもらうことができる)

よって接客者のクレーム対応は、サービスの信頼性を高める目的で行われる。
利用者の感情解消はプロセスに組み込まれることがあっても、それを目的とするわけではない。
万が一サービスの信頼性と利用者の感情解消が一致せず反目するとき、サービス提供者と接客者はサービスの信頼を上位に置く。
そうしなければ、適切にサービス提供を行い、そのサービスを支持してくれている利用者に対して裏切り行為となるからである。

このような信頼に基づいたクレーム対応を行う接客者に支えられたサービスでは、単なる誹謗中傷や営業妨害などの悪質なクレームを発信する利用者が減り、高頻度利用者による良質なクレームが増える傾向にある。

良質なクレームとは、サービス利用者を理解し信頼しているからこそ、自らもその立場に立つことで「もっとこうしたほうがいいのではないか?」というような提案を行うことや、「言いにくいけど、ここは悪いと思う」などの好意的な指摘を行うことである。
そのクレームは、人がクレームと聞いてイメージするような苦々しいものではなく、お客が欲求をぶつけるものではなく、まるで親しい友人同士が遠慮がちに、しかしはっきりと相手のことを思って発言するようなものである。
この信頼に基づくクレーム対応から、2つのことがわかる。

ひとつは、クレーム対応はその数を減らすためにあるのではなく、悪質なものを良質なものに変えるためにあるということ。
もう少し正確に表現すると、悪質なクレーム発信者を減らし、良質なクレーム発信者を増やすこと。

もうひとつは、誹謗中傷などのクレームが少なく高評価されることが多いサービスであっても、このような良質クレームが存在しないサービスは、実は完全なサービスではないということ。
利用者の信頼がまだ弱いと捉え、改善の余地があるということである。

良質のクレームが発生した場合、必ずしもその意見や提案を取り入れる必要はないが、慎重に検討する必要はある。
慎重に検討する行為そのものが重要になる。
なぜならクレームの機会とは、「信頼性の確認作業」の次に、第2の機会としての「良質のクレームをもらう」目的があるからである。

慎重に検討するというのは、「良質のクレーム」をもらい続けるために必要な前提条件になる。
言っても検討もされなければ、人は口をつぐんでしまう。
この第2の機会は、第1の機会をクリアしてはじめてもたらされる。

第1の機会である信頼性の確認に対して、対応手順の基本作業を見ておこう。
クレーム対応のスキルに関しては様々な本も出ており、各接客業のエキスパートがセミナーなどを開いているので、ここでは対応がはじまり終了するまでの3つの流れだけを追う。
宣言をする、感情を聞く、対策示す、の3つである。

宣言をする

クレームや問題の多くは、個人の感情や気分による。
サービスを不満足だと感じる感情や気分は、各個人のこれまでの経験によって得られたサービスの、感覚的な知識レベルを満たしているかどうかによる。
つまり過去に同じようなサービス、他のサービスで経験した気分を下回る場合にクレームにつながる。

その他のクレームは、サービスを良く理解している人が不備を指摘する場合か、接客の仕事に就いている人が、相手のコミュニケーション力の低さに立腹する場合などが考えられる。
あるいは純粋な勘違いという場合もある。

いずれの場合にしても、クレームの大半は個人の感情をベースに発生する。
なぜなら同じ方法で同じものを提供しても、それを問題視する人としない人が出るからである。
提供に問題があるというよりは、捉え方の気分の問題と考えた方が現実的である。

感情や気分によって出されるクレームに対し、接客者はまず宣言を行う。
接客によるクレーム対応のスタートラインになる。

宣言とはつまり、「私は今からあなたに100%時間を使い、解決するまで協力します」という姿勢のことである。
どのように宣言するかは、業種や相手の状態によって変わる。
さりげなく知ってもらう場合もあれば、大げさに宣言する場合もある。

不満を抱えている人は、正面を向いて対応されないと感じたときに不満を増大させ、爆発させる。まずそれを避けるためのライン引きを行う。
これまではサービスに不備があったけれども、今からはそういうことは起こらないというラインを引く。
言い方を換えれば、今のあなたの怒りが最高値であるというラインであって、これからは良い状態になると示すことでもある。

この宣言は、これ以上リスクを広げない方法であると同時に、「今からは、これまであなたが知り得なかった私達の信頼性を知ってもらう機会です」という宣言も兼ねる。
問題対処としてラインを引くのではなく、クレームの対応の目的である「信頼性の確認」のためにラインを引く

多くのクレーム対応はしくみが弱いことなどもあり、現場で謝罪することで状況を切り抜けるという方法が取られがちである。
そのような場合の前提は機会志向ではなく問題志向で、対応ではなく対処になる。
それでは信頼性は必ず損なわれ、お客はそのサービスを必要としているにもかかわらず、サービス利用を停止する。
お客の満足、不満足の問題ではなく、サービスが上手く機能しなくなる条件のひとつになるということである。

感情を聞く

宣言によってひとまずの信頼を得ると、次に話を聞く。
自分が言いたいことを言ってはならない。
解決しようとしてもならない。

物事の「不備」と共に、どのような「気持ち」になったかの話を聞く。
それを促す質問は行ってもいい。
相手が十分に話したと判断できるまで聞く。
主体は利用者であって接客者ではない。

話を聞く間、謝罪してもならない。
提供者に明らかな非がある場合、先に謝罪をすることはある。
これは「宣言」であって、話を聞く際には行わない。
宣言でラインを引いた後に行うべきことは、信頼性を確認してもらうことであって、謝罪することで気分を持ち直してもらうことではない。
また前後関係と相手の話を聞き終えるまでは、本当に心から謝罪を行うことははできない。
だからこの段階で謝罪は行わない。

話を聞くというのは事実の理論的な流れと共に、またはそれ以上に、相手の気分と感情を聞くことである。
コミュニケーションスキルとして、あいづち、気持ちに対する同意などを行うこともある。
相手の立場に立ち、気持ちを感じながらも、接客者としてサービス提供者側の立場も守る。
よって対策や言い分に対し、この時点では賛同も否定もしない。
単に終止話を聞く段階である。

対策を示す

最後に、利用者の感情に一致する接客者の感情を伝え、対策を示す。

感情の一致というのは、人として相手の立場に立ったときに、自分も同じような気持ちになることである。
どちらが正しい、正しくないにかかわらず、1人の人間として賛同できる気持ちの部分を相手に伝える。
伝える内容はあくまで「同意できる気持ち」であって、対策やしくみ、サービスに関することではない。
目的は共感にある。

ただし共感できそうな部分に話を合わせてはいけない。
次の「対策」を有利に運ぶ感情に共感し、不利な感情を無視してもならない。
要するに計算で共感を行わない。

ただ純粋に「同意できる気持ち」を表現する。
人に共感することのできない接客者は、このレベルの接客を行うことはできないともいえる。
一定の効果を狙うために共感するのではなく、個人として同じ気持ちになるところを伝える。

対策を示す際に行うべきことは、できることとできないことをはっきりとさせることである。
そして、できることはなるべく利用者の感情解消と結びついているものから話し、できないことは利用者の感情に影響しないことから話す。
できることとできないことがある場合、できることから話す。

利用者の感情解消に結びつかず、しかしサービス上できないことがある場合は、その事実を伝えると共に謝罪を行うか、再検討のために時間をもらう。
どのような方法を取るかは、どの方法がサービスの信頼を保つかによって異なる。
ただし仮に信頼を失うとしても、コンセプトに反する方法は行わないようにする。

これとは別に、対策に対する利用者の理解が得られた一致ポイントは、その効用を確認し合う。
効用の確認はどのようなクレーム対応の場合も必ず行う。
仮に上手く一致ポイントを見つけられなくても、効用の確認作業はこれまでのサービスの信頼性が失われていないことに気がついてもらうことができる。
一致ポイントの効用を説明することができれば、これまでに知り得なかった信頼性を確認してもらえる機会を持つこともできる。

こうして初回の対応が終わった後、改善や対応の進捗状況と結果の説明を、それが完璧に終了するまで利用者に報告し続ける。
この作業を省いて、サービスの信頼は保たれない。

これら3つの流れが、クレーム対応の王道である。
機会対応の前提を持ち、この3つの手順を踏むことで信頼性を再確認してもらう。

この手順を踏んでも、前提が問題対処であればサービスが上手く機能しなくなる原因が残る。
お客が問題を抱えたままサービス提供を受け、クレームを発信し続け、接客者はその問題にいつまでも対応し続けなくてはならなくなるからである。

商売主体の接客を行うこと

顧客満足の場合と同様、接客の仕事には商売の役割がある。
セールスとしての役割を中心に接客を行った場合、サービスが上手く機能しなくなることがある。

人がサービス提供を望んだときに、正しいサービスの提供よりも売り上げや契約数、セールストークなどを優先する接客者は、正しくサービス提供を行うことができない。
セールスにもその仕事の成果を出すレベルがあるが、そのレベルの低い、特に押し売りとぺこぺこ、自己主張の、3つのケースの場合は、サービス提供前にサービス利用を断念させる原因になる。

売るということは、必ずしも提供するサービスの内容の良し悪しに関わりを持たない。
担当が気に入った、他のサービスを知らず今さら知る気もない、押しの強さに断り切れなかった、上手く乗せられて、などの理由で販売することは可能である。
または、会員専用のお得な割引券やスタンプカードがあるから買い続けるという人もいる。

しかしこれらの方法のどの場合も、基本サービスを提供するということに関わりがないことがわかる。
基本サービス提供以前に、販売によって物事が完結していることがわかる。
基本サービスを支持しているかどうかは重要視されていないことが明らかである。

商売上は顧客離れが起きず、収益を上げることが一定の成果になる。
顧客が満足を感じ続け、売れ続ければ成功となる。

しかしサービスは、提供すると決めたものを提供し続けることに目的がある。
接客者が商売の考え方によって販売で完結する行動を取ると、サービスを正しく提供しているにもかかわらず利用者はサービスに対して不信を抱くようになる。

商売主体の接客を改善する場合は、しくみに定める。
接客者の役割と仕事の、サービスと商売のバランスを明確に決める。
サービスが上手く機能していないということは、このバランスが悪い可能性があり、比重を変えることで対応する。

ただし、一度定着した現場の仕事の流れは簡単に変わらないため、改善したしくみに沿って仕事を行うことができるように工夫する必要が生まれる。
たとえばマネージャーの定期チェック、報告書の書式の改善、オピニオンリーダーの設定、定期ミーティング、期限付きのスキルの課題とチェックなど、提供するサービスと接客の状態に適した方法を取り入れて接客を改善する。

機会対応である社外対応を実行することができたら、問題対応である社内対応に移る。
社内機能、全体的なサービスの提供阻害の問題改善は、しくみに関することである。

本来、接客はしくみによってルール化されたことを実行する立場にあるけれども、同時にしくみは接客によって改善される
接客者は現場のクレーム経験をしくみ改善のために投げかけ、情報を提供する。

提供された情報は定期ミーティングで検討され、どのような形でしくみに取り入れるか、改善するのか、例外的なケースとして保留するのかなどを決める。
決定の基準は、それを改善することによって「信頼性を再確認してもらえる機会」の質量が増えるかどうかで決める。

ベテランの接客者は、その方法を取り入れることで利用者の信頼促進(少なくとも回復)がなされるかどうかだけではなく、全体のサービスがうまく機能するかを俯瞰しながらしくみ改善を検討する。
全体的なサービスが滞ると、そのサービスを必要とする全ての人、多くの人へのサービス提供が困難になってしまうからである。

サービス提供のための失われた時間を取り戻すために、客観的に事象を判断し、最も効果的な処理方法を取り入れるようにする。
しくみに取り入れられた改善は、統一したサービスとして接客者全体に浸透させる。
この接客者による改善作業によって、サービスが上手く機能しない状況が改善される。

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