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ブランドの対策

上位・下位ブランドの対策

サービス提供者はサービスが上手く提供できたとき、そのサービス提供の経験を活かすことのできる、別ブランドを立ち上げることがある。
最も単純なものは価格帯に差をつける方法で、ローソンが展開する上位ブランドのナチュラルローソン(自然に優しいイメージとしても展開)と下位ブランドの100円ローソンは事業としてもサービスとしても成功している。

しかし多くのサービスが別ブランドを展開するとき、これまで培ったブランドを崩してしまうことがある。
たとえばアメリカのファッションブランドであるダナ・キャランは下位ブランドのDKNYを展開した直後、株価を大幅に下げた。
アメリカのホテルチェーンであるホリデイ・インは上位ブランドであるホリデイ・イン・クラウン・プラザを展開し不調に終わった。
人々はダナ・キャランに黒で女性を彩る素敵なドレスをイメージし、ホリデイ・インに安ホテルのイメージを持っていた。
そして、そのイメージはサービス提供者のコンセプトと一致していた。
このコンセプトと理解の一致であるブランドに合わない、または理解の一致を崩すブランドを展開したとき、ブランドの力は弱まる。

想像力を膨らませれば、意外と容易に理解することができる。
例えば、女性の解放と黒・白・ベージュを掲げるシャネルが、次の時代は「男性のカジュアル服で、赤・青・緑をコンセプト」に展開したとして、受け入れられるはずがない。

またはTOYOTAから高級車を分離して、上位ブランドとして成功しているレクサスが、大衆車市場に乗り込んだとしたらレクサスブランドは一気に崩れるだろう。
日本で最も歴史のある和菓子の虎屋が洋菓子の専門店を、通信事業であるNTTドコモがパソコンの製造と販売をはじめたとしたら、私たちは何か心地の悪い違和感を覚える。

ローソンを機軸とした、ナチュラルローソンと100円ローソンがブランドを上手く保ったのは、最初から基本コンセプトが機軸になっているからである。

コンビニエンスストアは、1970年代にセブンイレブンの1号店がオープンしてから今日まで、日本人の文化に新しい価値観をもたらしてきた。
まさにサービスとして社会貢献してきた。
そしてそのサービスは成熟し、成熟したサービスに良く見られるように、個別コンセプトが存在しないか、あってもほとんど意味を持たない状態になった。
既にそのサービスはどこにでも存在するものであり、各サービス業者によって多少の違いはあるにしても、基本的に提供する物も提供する方法も同じである。

コンビニの利用者はローソンを求めるのではなく、基本コンセプトに沿ったサービスを求める。
それは、24時間開店し、ほとんどの日用品を、即座に購入することができるというコンセプトである。
これがコンビニエンスストアのブランドであり、良い悪いは別としてこのようにお客は理解している。

ナチュラルローソンと100円ローソンが別ブランド展開して成功したのは、はじめからこのような基本コンセプトに沿った展開を行ったことによる。
自然に優しいか、100円であるかの違いはあるにしても、扱う商品、陳列、利用方法などは、ローソン本体によって築かれたブランドと変わらない。

これに対して、シャネルがメンズカジュアルを、レクサスが大衆車を、虎屋が洋菓子を、NTTドコモがパソコンの製造をした場合に感じる違和感は、個別コンセプトに鍵がある。

シャネル、レクサスは個別コンセプトによってブランドが成り立っている。
提供するサービスと、お客理解の一致している部分が個別コンセプトに頼っている。
誰も、シャネルがただのレディースウエアであるとか、レクサスが車を販売するだけであるとか、基本コンセプトに対する単純理解でサービスを判断しない。

このような個別コンセプトの理解によって支えられているブランドが、個別コンセプトに反した別ブランドを展開すると、それまで培われたブランドに悪影響を与える。

虎屋とNTTドコモは、和菓子とデータ通信(または携帯電話)という基本コンセプトによってブランドが確立している。
洋菓子とパソコンの製造は、その基本コンセプトと大きなズレがあり、利用者はそのズレを見て混乱する。
この混乱はやはり、これまでのブランド低下を誘う。

これに対してホリデイ・インのケースは特殊である。
ホリデイ・インは宿泊を提供するという基本コンセプト以外にこれといって特徴がないホテルである。
このような基本コンセプトによって成り立っているサービスが、個別コンセプト(高級ホテル)を中心にブランド展開すると、これまでのブランドが崩れる。

つまり上位・下位のブランドを展開するとき、成功できる展開の考え方は2つしかないことがわかる。
基本コンセプトによって成り立っているブランドが、基本コンセプトを中心に展開を行うローソンのようなケースがひとつ。
もうひとつは、シャネルがシャネルのコンセプトを崩さず毎年2回新作を発表するように、あるいはレクサスが高級車の新車を開発するように、個別コンセプトで成り立つブランドが、個別コンセプトを中心に展開することである。

個別コンセプトを中心に展開しながら、各ブランドで統一したイメージを維持し成功しているのがコムサ・デ・モードである。
衣料はレディース、メンズ、それぞれのやや上位、やや下位ブランド、子供服、文具などの日用品、食料品などを展開し、全てを崩さない絶妙なバランスを保つ。

コムサ・デ・モードのブランドは、オシャレでスタイリッシュ。ナチュラルカラーというところにある。
これらは個別コンセプトに則っている。
コムサ・デ・モードの服を着ていれば羨望の目で見られはしなくても、安物、ダサい、などと思われることはない。
子供にコムサ・デ・モードの服を着せれば、それなりにオシャレとなる。
たとえば会社で使う、自分専用の文具がコムサ・デ・モードであれば、なんとなくオシャレだと周囲に思われる。
デパートの地下で弁当を買うのであれば、コムサの小分けされたスタイリッシュなお弁当の方が格好いい。

個別コンセプトに支えられているブランドが、このように個別コンセプト中心のブランドを展開すると、成功する可能性は高い。

サービスが上手く機能しない状況に陥ったら、ブランド展開の前提に間違いがないかを見直す必要がある。
見直すポイントは2つある。

ひとつは、基本コンセプトのブランドが基本コンセプトに沿って展開しているかどうか。
個別コンセプトのブランドが個別コンセプトに沿って展開しているかどうかというポイント。

もうひとつは、ブランドを中心に展開するのではなく、サービスやサービスを扱ってきた経験、コンセプトを中心に展開していないか、ということである。
この場合はブランド中心の展開にスイッチする。

ブランドとコンセプトのズレを発見した場合は、上位・下位ではなく別ブランドとして再構築するか、撤退を考慮に入れる。
元々ダイエーグループがローソンを展開する際に、ダイエーのコンセプトもネーミングも、カラーも採用せず、独自ブランドとして展開したのと同じことを行う必要がある。

ブランドではなくサービスやサービス提供の経験によって展開してしまい、ブランドが低下していることに気がついたら、ブランドによる展開にスイッチする。
提供するサービスがブランドを維持し強めるのに役立っているか、ブランド展開のルールに適っているかを確認し調整する。

上位・下位ブランドの構築、展開によってサービスが上手く機能していないとき、またはこれから別ブランドを展開する場合、これらのルールがサービスを上手く機能させることに役立つ。

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