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プロセスの対策 - しくみ

全体の完璧さ・不快感を与えない


しくみを見直すことによってプロセスの改善を行うときに、不備が発見されないことがある。
または、上手く改善することで完璧になったはずのしくみでサービスを運営しても、サービスが思うように改善されないことがある。

しくみの改善を行うとき、基本サービス提供前、提供中、提供後のプロセスや、さらに細かい取り決め、ルールなどの各パーツは完全であっても、それらが組み合わさってトータルサービスとなったときに、はじめて不具合が生まれることがある。
このような場合、それぞれのパーツをさらに改善するとますます機能不全に陥いってしまう。

懐石料理では、順番に提供されるそれぞれの料理一品一品に対して、緻密な計算がされている。
豪華であればいい、高価であればいいということではない。

先付けや食前酒からはじまる料理は、ほとんどの場合、食事が進むにつれて味が濃くなるように設定されている。
刺身の前に煮物が、煮物の前に焼物が提供されることはない。

これと同じことは、最上級の寿司屋でも経験することができる。
白身などの淡白な食材からはじまり、貝類、光物を経て、徐々に脂身の乗った素材の提供が行われ、最後は最も味の濃い煮物で締める。

懐石料理、寿司共に、それぞれ一品一品の料理が完璧であったとしても、提供の順番を間違ってしまえば、全体的に不足感の残る料理を経験することになる。
せっかくそれぞれの料理に精魂と愛情を込めても、その反映が間違っていては全体的に正しいサービスを提供できたということにはならない。

また、懐石料理では味の濃い料理と料理の間に、椀物としてお吸い物を提供することがある。
料亭・料理屋によって差はあるだろうが、このお吸い物は単品として味わった場合ほとんど味がしない。
一品物として提供するには失格と断定しておかしくない、味が極度に薄い汁物である。
しかし料理全体に組み込まれ、濃い料理の合間に提供されることで、次の料理を味わう状態に味覚を戻し、トータルサービスの提供に欠かすことのできない一品としての役割を果たす。
このお吸い物をもう少し味濃く、風味豊かな料理として単品の完璧さを期してしまうと、逆にトータルサービスが台無しになってしまう。

しくみの構築は、懐石料理のようなものである。
サービス全体を機能させるためにしくみを見直し、完全である各パーツの組み合わせが、トータルサービスに対して本当に貢献しているかどうかという視点で確認し、改善を行う。

提供時に不快感を与えない構成になっていること

利用者がしくみを経験するとき、不快感を感じることが原因でサービス利用を止めてしまうことがある。

まず、ハードの維持が不足している場合が考えられる。
店舗の場合であればトイレが不潔であると利用者は不快感を感じる。
トイレの清潔・不潔は基本サービスの提供に直接は関係しない。
しかしお客が基本サービスを継続利用するか、しないかには直接関係する。

壊れたイス、切れた電球、安全性に問題のあるハードなどは、サービスが上手く機能しなくなる直接の原因になる。
ハードの維持はしくみによって設定し、不快感を取り除くことを目的に見直す。

しくみそのものの不備は、過剰サービスと不足サービスが原因になっていることがある。
多くの場合、コンセプトを忠実に反映した正当な理由によって過剰、不足を決めていることがほとんどである。
これがサービス提供を阻害する原因になることがある。

デパートの場合、包装紙を過剰に使うことに対して様々な意見がある。
包装を手間だと感じる人も、急いでいる人も、環境問題が気になってしょうがない人も、そのプロセスを心地いいとは思わない。

しかししくみもサービスの一部であり、そのデパートが「徹底した包装をして利用者に提供する」と決め、コンセプトに適っているのであればそれは基本的に変える必要のあることではない。
包装を嫌う利用者は、効用が一致していないと捉えることもできるように思える。

ところがそのコンセプトに則ったしくみが、基本サービス提供を断念させる場合には、しくみを変更する必要がある。
または接客によって行う対応に幅を持たせるようにするといい。

しくみと基本サービスが対立する場合は、基本サービスを優先する
しくみの利用者に対する効用一致よりも、基本サービスの効用一致を優先する。

接客によってこの矛盾に挑む場合は、しくみの実行に幅を持たせるルールを定める。
急いでいる利用者に包装を省略することは、コンセプトをサービスに反映しないことにはならない。
完全なしくみがわざわざ不快感を喚起し、サービスの安心感を奪わないように見直す。

不足サービスも同様である。
ビニールの買い物袋は、包装の場合と同様に資源問題にもなっているが、現在のスーパーやコンビニで、できるだけビニール袋を提供しないしくみは作らないほうがいい。
いくら環境問題に積極的に取り組んでも、正しくサービスを提供しても、このようなしくみの一部がサービス利用者を遠ざけることにつながる。
結果としてサービスが上手く機能しなくなる。

しくみの改善を行う場合、しくみにコンセプトを反映することがサービス提供の阻害になるときは、コンセプトよりもサービス提供を優先する。
コンセプトはハードと基本サービスに反映し、しくみはその両方を上手く提供することを目的にする。

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