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サービスの変化に対応する

再定義の手順

再定義を行うには、まずサービスの特性と、環境適応の関係を知る必要がある。

特に、サービスが上手く機能しなくなった理由が、嗜好の変化よりも先に、技術の変化にあるのか文化の変化にあるのかを観る必要がる。
技術の変化の場合、短くても過去3年間に社会や業界に影響を与えた技術によって、提供するサービスの定義が変化していないかどうかを調べる。
文化の変化の場合は過去10年の間に、業界に対して影響を与える社会上の変化があったかどうかを調べる。

そして、どちらかの影響を受けていることが明らかになった場合、またはどちらの影響も受けていないことが明らかになった場合だけ、嗜好の変化に対して調査を行う。
この3〜5年のトレンドの変化が業界と自らのサービスに与えた影響を調べ、情報を集める。
また業界に影響を与える流行とトレンドの違い、スタンダードになるトレンドとならないトレンドの傾向の違いを把握しておく。

大きな流れの中で、業界や業界のサービス、自社のサービスが影響を受ける傾向を、情報収集から分析することによって共通する特徴を見つけ出す。
どのような変化があるときにサービスを再定義しなければならないかが明らかになったら、再定義の実行動に入る。

例外的に、技術の変化に大きな影響を受けサービスを再定義する場合は、2次的に生じる文化の変化と嗜好の変化に対して、新しい意味のサービスがどの範囲まで対応するのかを視野に入れなくてはならない。

これとは逆の方法で行うこともできる。
望ましいのは両方を併用することである。

まずサービスのコンセプトが、どのような環境適応に最も影響を受けるかを予想する。
影響を最も受ける変化から、最も受けない変化を想定する。

次に影響度によってカテゴリわけを行う。
過去5〜10年間に起こった、技術、文化、嗜好、人口構造の変化に対して、自社のサービスにおける環境適応の位置づけを、シミュレーションしてデータ化する。
そして現在起こっている環境の変化、または今後高い確率で起こるだろう環境の変化を想定図に組み合わせ、本格的に変化が起こる前に再定義の準備をはじめる。

前者は環境の変化からサービスを位置づけする方法である。
後者はサービスに環境の変化を当てはめることで分析を行う方法である。
両方を併用することで、より確実な環境適応の目処を立てることができる。

情報を集め、調べる方法は、インターネットやメディアなどでニュースになるような情報を観察することもひとつの方法になる。
しかし、実際にはサービスを中心として関係性の深いことから情報を得るようにする。

たとえば、

 サービス利用者の考え、
 業界の動向に加え、
 コンセプトが似通った他業種、
 異業種の動向の注目、
 社会的貢献度の似通った他サービスへの注目、
 自らのサービスに関係するマーケティングの視点、
 コンセプトとサービスが限りなく近い海外のサービスの観察、
 業界に影響を与える法律への注目

などを視点の中心に置く。
変化するのは社会であり、外的な要因である。
コントロールすることはできない。
予測も外れることは数多くある。
しかし内的な要因に影響を与える外的要因であれば、あらかじめ情報を集めてまとめることで将来に備えることができる。

このような総合的な情報収集と分析は、1年に1度、どんなに長くても3年に1度は見直し、サービス運営の一部に組み込む。
見直しは各プロセスに通じた人材によってチームを組んで行われるか、それぞれのサービスプロセスを実行する部署に必要な情報を提供し、調査の結果を上げてもらう。
上がってきた調査の結果、総合的な情報、現在地の予測などを総合して複数の再定義を行い、複数の意味を想定する。
想定された再定義と、新しい意味を持つサービスのいくつかは、小さく実践することで試行錯誤する。

全く新しいサービスを創造するときは、コンセプトに沿ってハード、基本サービス、しくみ、接客の順にサービスを作る。
これに対して、再定義によって新しい意味のサービスを見出す場合は、接客からはじまり、しくみ、基本サービス、ハードの順番で行う。

順番が逆転する

情報収集を行い、分析をし、いくつかの想定の元に、はじめて小さく実践が行われる。
しかもその実践は、数年かけて行われる。
数年の時間があると言い換えることもできる。
だからいきなり大きく試すことで、大きな痛手を被る可能性を選択したり、現在のサービスに対する利用者の信頼を裏切る可能性の高いものを試したりしないように気をつける。
最初は小さく試す。

試行錯誤は失敗を前提にではなく、成功を前提に行う。
実験によってデータを収集するためではなく、成果によって環境適応するために行うようにする。

だから成功の確率の高い実践を、失敗の確率の低い機能から試す
少なくとも、失敗が悪影響を及ぼしにくい機能から試す。
その機能が接客であり、接客の次がしくみになる。

これは、再定義を実践しても接客は変更、中止がしやすく、基本サービス、ハードはしにくいという理由もある。
しかし最大の理由は、再定義は慎重に確実に行うということにある。
大胆にリスクを伴って行うと現存ブランドを崩す可能性がある。
それではお客の信頼を失わせてしまう。
だからコンセプトの反映を小さく試すことのできる接客からはじめる。

接客は成功する可能性の高い再定義を試し、実際に成功したものはしくみに反映する。
しくみによって新しい意味が定着することで、トータルサービスが環境適応し、徐々に変化して再生されていく。

仮に失敗したとしても、接客はサービスの機能の中で最も修正が利きやすいという特徴を活かし、現在のサービスに被害を及ぼさないように現場で調整を行う。

こうして現在のサービスが守られながら、同時に新しい意味のサービスの形が接客より作られる。
この成功例は、しくみに残すことでトータルサービスに反映される。
再定義がトータルサービスに反映され、サービス全体が環境適応できる状態になると、基本サービスを変える必要がある場合はその準備が整う(基本サービスを変えない場合はこのプロセスで終了する)。

エルメスの場合、販売ルートが確保され(接客)、製造に対しての確実な技術があり(しくみ)、それらが新しい意味のサービスに適応する状態になったとき、はじめて馬具の製造からカバンの製造に移行する(基本サービス)ことができる。
そしてこのエルメスのケースは、商品へこだわるコンセプトと、これまでに培ったブランドによって支持され、新しい意味のサービスを成功させることに結びついた。
私たちも、環境適応による変化に対応する場合は、エルメスと同じ手順を踏むことでサービスを存続させるようにしたい。
そしてこの手順が完了し、新しい意味のサービスが定着したとき、サービスが完全に再生されたということになる。

サービスの再定義は、大きな変化を受け入れた社会に対して、自社のサービスがどのような意味を持って、何を提供していくのかを問い直すいわば反省であり、同時に新たな決断でもある。
そして次の社会を新しいサービスによって構築する機会になる。

反省と決断は、機会としての明日を創るために行われる。
再定義は、画一的で統一的なサービスが、明日を創り続けるために行う、正しい手続きのようなものである。

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