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サービスの選別

効用と約束を見分けるウラ技


約束についてもう少し詳しく理解しておこう。
基本サービスにも実は、約束が守られやすいものと守られにくいものがある。

約束が守られやすいサービスは、信用することはできるものの物足りなさを感じることがあり、守りにくい約束をしているサービスは前向きでチャレンジ精神があると考えることができる反面、信頼性に乏しいということもある。

守られやすい約束を提供するサービスは画一的なものが多い。
たとえば製品やチェーン展開がある。
自動車や電化製品は日本が世界に高品質を誇っている。
同じネーミングの車やPCは、同じ機能と同じ性能を持っていると約束されている。
映画館やファミリーレストランでも同様に、上映する映画の内容はどこも同じであり、メニューにある料理も全国で統一されている。
このような約束は明確で守られやすい。

逆にお客1人1人に別個の約束をするサービスでは、約束は守られにくくなる。
ホームページを作成するデザイナーは、クライアントによってデザインも内容も変えなくてはならない。
「青を基調にスタイリッシュ」というイメージに応えることは約束できても、全体的な結果を約束することはできない。
美容師、ネイリストなどのクリエイティブな技術職も同じで、お客が個別に要求する「短く切ってほしい」「茶色に染めたい」「結婚式に合った色味にしてほしい」「かわいいビーズで模様を作ってほしい」などの効用に対して、約束を完全に果たせるとは言い切れない。
そもそもの約束自体があいまいで抽象的だからだ。

このようなサービスを利用するときは一度で判断せず、数度の利用の中で効用を満たすか満たさないか、果たすことのできる約束が守られているかいないかを観察した方がいい。

効用と約束を見分けるウラ技

効用は自分の内側にあるもので、約束は相手が守るものである。
しかしサービス事業者を見ることで、効用が一致するかどうか予想でき、約束が守られるかどうかを見分ける手がかりがある。
それはサービス提供者のサービスコンセプトや理念に注目することである。

コンセプト、理念というのはサービスと提供者がどこを向いているのか、なぜそれを行うのかということを教えてくれる、ポリシーや想いのことである。
お店や会社案内などで見つけることができる場合もあるし、ほとんどの場合ホームページに示されている。
このコンセプトや理念が実行されていると感じることができれば、高い確率で効用が合い、約束が守られる。
キャッチコピーやスローガンのようなものなのであれば、効用も合わず、約束も守られない可能性が高くなる。

たとえば、スターバックスには「サードプレイス」というコンセプトがある。
「サードプレイス」とは、職場でも家庭でもない第3の場所という意味であり、くつろいだりマイペースで仕事をしたりすることのできる場所のことである。

実際に私たちは、スターバックスの店舗に身を置くことで職場でも家庭でもない雰囲気を味わうことができる。
くつろぎ、マイペースになることができる。サービスコンセプトは守られていると感じる。
接客者が直接サービスを行う、たとえば宅配便のような仕事では、接客者にそれとなく問いかけてみることで確認することができる場合もある。

私の知人は送り先の決まっていないソファを手元に置いておきたくなかった。
そこで数社に電話で問い合わせをした。
結局送ることは(もちろん)できなかったが、そのうち一社だけが様々な可能性について検討してくれた。

サービス利用はお客が一方的に決めることができる

サービスで何を提供するかは、提供者が一方的に決める。
私たちはそれに意見を言うことはできても、思い通りに変えることはできない。

しかしそのサービスを(継続)利用するかどうかということは、お客が一方的に決めることができる。
これが、私たちが持つ最大の強みだ。

そんなことは当たり前だと思うかもしれない。
しかし実際には、お客がサービスを選ぶことができるようになったのは19世紀に入ってからのことで、その歴史は比較的浅い。
それまでサービスというのは、公共機関だけが提供するものだった。
道路や上下水道を造り、人びとはそれを使うより他に方法がなかった。
時には徴兵制のように、拒否することができないものがサービスだった。
そのようなサービスが、18世紀末から19世紀はじめにかけて商売に組み込まれるようになったことでサービス業が生まれ、はじめて私たちは選ぶことができるようになった。

そして現在ではほとんどどのようなサービスも選ぶことができるようになったため、良く考えずにサービスを利用しはじめ、気分や瞬間の感情でサービスの利用停止を決めてしまう。
ロンドン事件の主婦のように、効用が満たされているにもかかわらずサービス利用を止めざるを得なくなることすらある。

このことに対して、サービス提供者はお客を失うことの危機を説くだろうし、接客の改善を行うだろう。
お客はそれを見て「やはり自分が正しかった」と自己満足するかもしれない。
しかし、サービス利用を止めざるを得なくなれば、損をするのは結局自分である。

私たちはサービスを「うまく受ける」ことができる。
気分や感情でサービスを利用しなくなることは、結局私たち自身にとって大きな損失になるということを知らなくてはならない。
そして効用と約束を基準にすることで、間違ったサービスを選ぶことと、間違ったサービスを継続利用することを避けることができる。
サービスを受けることによるリスクは、この方法で最小限に抑えることができるのである。

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