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特別なお客になる技術

場の空気が支配されたとき

では、機内の話のように、場の空気が誰か他の人によって支配されたとき、私たちはそれに対応する手段を持つのだろうか。
答えはほとんどの場合ノーなのである。

たとえば、機内であれば隣の人か私が席を替わることでその空気を避けることができるかもしれない。
しかし、満席の機内でそれを行うことは難しい。
囚人役と監視役の関係で、囚人役が主導権を握るということも同じように難しいし、生徒が教室の後ろに立つ先生に対して、場の空気を変える何かを行うことも同様に難しい。

このようなときにできることは、嵐が去るのを待ち、なるべく早くそれを止めてしまうことしかない。
場と無関係になるしかない。

あるいは、立ち向かうという方法もある。
私が隣の男に「態度が悪い。スチュワーデスも気を遣っている。嫌なら乗るな」と言えば、場の空気は変わる可能性がある。
囚人が反乱を起こし、生徒の1人が「後ろに立たないでください」と言えば、場の空気は変わるかもしれない。
しかし、変わらないかもしれない。

既に作られた場の空気を変えるためには、その場の空気を作り出しているキーパーソンの影響力が低下し、他のキーパーソンの影響力が上がることでしか改善はされない。
私たちは、耐えるのが嫌で、すぐに止めることもできない場合、可否を気にせずに反逆者になるか、したたかに影響力を取り戻すか、いずれにしても行動することを要求される。

予防策はある

支配された場の空気を一気に変えることは難しい。
であれば、先に主導権を握ってしまい、場の空気を作ってしまうという方法は有効である。
通常、場の空気を作らなければならないテレビ番組プロデューサーや司会者、映画の制作者や映画館のデザイナー、セミナー講師などは、サービス提供者として率先して場の空気を作ってしまう。

あるいはファミリーレストランやコンビニなどのやや画一的なサービスでは、サービスそのものが統一した場の空気を作っているということと、場が人に影響を与えるほど(心理的に)狭くないという理由から、お客が場の空気を作るために努力しなくてもいいようにできているサービスもある。

ある一定の空間でサービスが行われ、しかも(心理的に)長い時間継続して受けるサービスであり、かつサービス提供者にさほど支配力がない(スチュワーデスのように)場合、私たちは場の空気を作るか、少なくとも気にはかけた方が、サービスを上手く利用することができる。
誰かが悪い空気を持ち込む前に、いい雰囲気の場の空気を作ってしまう。
つまり予防策を取る。

場の空気を作ってくださいというと、難しく思えるかもしれない。
しかし意外に単純なことでそれはできてしまう。
たとえば、「ありがとう」を言うことや、「忙しいところ申し訳ないけど」とにこやかに話しかけることで場の空気は作られる。

状況が許せば、最初に率先して世間話を行い雰囲気を和ませることも効果があるし、「忙しいね」と共感することも少なからず効果を生み出す。
ちょっとした一言や行動が、悪い空気に支配されることを防ぐ予防策になる。

サービスの特性 提供は一方通行

商売では、商品(サービス)と金銭を交換するというのが古くからある最も基本的な考え方である。
サービスはこの考え方と少し異なり、サービス利用を決めた人に、確実に提供することが基本的な考え方になる。

現在でこそサービスは商売を通じて提供されるので、金銭と交換されるという考え方が主流になったが、もともとは公共サービスがサービスであって、税金を支払っているということを除けば、基本的に無料で利用することができるものだった。
現在でも図書館は無料で、市民プールは格安で利用できるのはその特徴の名残である。

しかし商売を通じて提供されるサービスであっても、サービス自体は金銭とは無関係のところで提供されているはずである。
レストランでは料金は後払いであるし、全額先払いする演劇や映画館などのサービスを受けるときも、サービス提供を受けているそのときに金銭が関わっているわけではない。

純粋にサービスを見たとき、サービスは提供者からお客に向かう一方通行である。
商売のようにお互いが交換の関係にある双方向の関係ではない。

名キャッチャーの役割

サービスが一方通行であるというと、お客は受身であり、何かをやってもらう立場なのでサービスを良くする行為は提供者(接客者)が行うべきだと考える人はいる。

これが双方向の関係であればキャッチボールを行う両者のように、両方に同じ努力や物の見方が必要とされることは想像に難くない。
しかし、一方通行にはそれを上手く作り上げるルールがある。
双方向がキャッチボールであるとするなら、一方通行はピッチャーとキャッチャーの関係といえる。

ピッチャーにはピッチャーの役割として望まれる技術があるが、球を受けるキャッチャーにも受けるために必要な努力や技術がある。
「ピッチャーが頑張れば良くなる」と考えるキャッチャーであるなら、そのバッテリーは上手くいかないだろう。

名キャッチャーはピッチャーをリードし、球を上手く受ける必要がある。
そうすることでピッチャーとキャッチャーによるすばらしい投球や制球が生まれるはずだ。
これと同じことがサービスにも当てはまる。
私たちはお客としてキャッチャーの役割がある。
それがサービスを受ける技術でもあるが、ここではその前提としてサービスは提供者とお客が一緒に作るものだということを知ってほしい。
それはピッチャーとキャッチャーで一緒に配球を決めるということと同じくらい重要なことである。

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