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第2の扉 - 卓越者が住む世界

感性を磨く


正直、感性の磨かれた接客者は恐ろしい。
彼らは頭の中を読んでいるのではないかと思うほど、考えていることやニーズを特定する。
お客が自分では気づいていないことさえ明らかにしてしまう。

感性はしかし、超能力や霊能力ではない。インチキ占い師のように誰にでも当てはまることを言って相手を納得させるスキルでもない。
具体的には直感と、感受性と、知覚であることが多い。
「であることが多い」というのは、他にも感性に種類があり、それが使われている可能性もあるからである。
しかしここでは、卓越した接客者に共通するポイントとしてこの3つに絞ることにした。

知性で間違うことがあるように、感性も間違うことがある。
知性を伸ばすことができるように、感性も伸ばすことができる。
知性が特別なものではないように、感性も特別なものではない。
両方とも人に備わっている。

卓越した接客者は必ず感性を磨いている。
その感性が、最初から強みであることも少なくなく、しかも強みであるために自覚していない人もいるが、それでも一様に彼らは感性を磨いている。
感性は磨くことができる。

間違った感性を排除する

感性を磨くためには誤った感性を取り除いておく必要がある。
卓越した接客者は強みを軸に感性を発揮し、それに気がついていない人もいるので、実際には間違った感性を排除しようと試みてはいない。
ただ、彼らも真摯さを身につける過程で、真実を追究する。

真実の追究はウソや偽者が入り込んでくることを許さないから、その意味では彼らも間違った感性を自動的に排除している。
私たちは、卓越した接客者が行っているように感性を磨く前に、ウォーミングアップも兼ねて誤った考え方を知り、排除しておいた方がいい。
それによって卓越した接客者とおなじスタートラインに立つことができる。

間違った感性は、主に浅い知識によって作られる。
たとえば私も子供の頃、幽霊が出るテレビ番組を見た後数日間は、外で自転車に乗っているとき、背後に霊がついてきているような気分になった。
そんな気が猛烈にしてならなかったし、後ろを振り返ってはいけないと頑なに家路を急いだ。
これはもちろん、感性ではなくただの気分でしかない。

ところが多くの大人も同じような過ちを犯していることになかなか気がつかない。
たとえばテレビで「ココアが体に良い」と放送されると、猫も杓子もココアを買いに走ってしまうことがある。
そしてココアを飲んで3日もすると、テレビで紹介されていた効能が自分の体に表れたような気分になる。

私の知人に、本で読んだり人に話を聞いたりして少しカウンセリングの知識を身につけ、会う人会う人の短所を「子供の頃のトラウマが原因」だと、直感している気分になっている人もいる。

水晶をひたいに乗せて瞑想をしている人に、こっそり消しゴムを乗せ換えたのに、オーラが増大するように感じる人の話も聞いたことがある。

気分や浅い知識は、学習から生まれる。
それも深く追求したわけではない表面上の学習から生まれる。
残念なことに、表面上の理解でそれを習得したように錯覚する人もいる。

卓越した接客者に習って感性を磨くのであれば、少なくともこのような真摯さに欠ける行動は慎んだ方がいい。
感覚で自分が判断していることが何であるかに注目する。
その中から、浅い知識で生まれた自己満足を省くと、本当はどのような感性を使っているのかということを知ることができる。
感性には具体的にどのようなものがあるのか、先に適応性無意識という視点から見てみよう。

適応性無意識の不思議

マルコム・グラッドウェルの著書「第1感」では、ギリシャ彫刻のクーロス像をはじめて見たイタリア人の美術史家フィデリコ・ゼリが、なぜだかわからないが、彫刻の指先に釘付けになり、爪が変だと感じた話が紹介されている。
その後、クーロス像は贋作であることが判明した。

テニスコーチのヴィク・ブレーデンは、テニスプレーヤーがサーブを2度失敗するダブルフォルトになることが直前にわかったという話を紹介している。
観戦でもテレビでも関係なく、ほとんど100%の確率で当ててしまう。

この本では、このような脳の働きと判断を「適応性無意識」と呼び、心理学での研究分野であるとしている。
適応性無意識は、不必要な情報を捨てて本質的な核となる情報を輪切りにして核心に迫る働きで、たとえばアメリカのカウンセラーの中には、夫婦の会話を聞くだけでその夫婦が離婚するかどうかを判断できる人がいると紹介している。

心理の流れか、脳の働きであるかはさておき、「第1感」の著者マルコム・グラッドウェルが紹介するような感性を働かせる人は確実に存在していることがわかる。
この本では言っていることや内容に注目するのではなく、顔の表情などをはじめとする印象を読むことで「心を読む力」が身につくとしている。
そのために心拍数を平常の状態に維持し、偏狭になる状況を避けたり、訓練によって慣れさせたりすることの重要性も教えている。
しかし、それらは実例によって示す方法を取っており、具体的にはどうするのかということを完全に明らかにはしてくれていない。

印象によって判断を下すという方法は卓越した接客者も行っている。
感性によって判断すると言い換えてもいい。
彼らが無意識で判断を下す物の見方は、やはり無意識に行われている。
強みに自覚症状がないのと同じような無意識がある。

私たちは、彼らの物の見方、考え方からヒントを得ることしかできない。
マネをすることはできないし、たとえマネすることができたとしても自分の強みを卓越の世界で生かすことにつながるとはいえない。
そこでここでは、卓越した接客者がよく使い、磨いている直感、感受性、知覚の3つの感性について見ていきたい。

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