Esmose

コラムを読む

Step4. 接客を作り上げる

接客のポイント「2.基本サービスを提供する接客」

接客を行う「人」が、サービス提供を直接行うことがある。

高速道路の料金所の接客者は、サービスを直接提供していない。
高速道路ではハード(道路)の利用が基本サービスで、道路を走って初めてサービスが提供され、道路を降りるとサービスの提供が終わる。
接客はサービスの一部分(しくみ)として、関所の役目を果たすにすぎない。

レストランのウエイターは、しくみと「基本サービス提供」の両方の役割がある。
接客者が食事のオーダーを取るとき、まだ基本サービスである料理は提供されていない。
これがサービス提供前のしくみの働きになる。
食事が終わるとお客は支払いをおこない、これがサービス提供後のしくみの役割になる。
料理をお客の目の前に運ぶことが、接客の基本サービス提供になる。
ただしお客が基本サービスを利用している間中ずっと、接客者が提供し続けているわけではない。
接客はお客の基本サービス利用のきっかけを提供する。

スポーツジムの場合だと、インストラクターがレクチャーを行うサービスは全て「基本サービス」の提供になる。
各クラスがはじまってから終わるまで、インストラクターが全てのサービスを提供する。
この様なサービスでは、接客者が接客することがイコール基本サービスを提供することになる。
基本サービスは接客が存在しなければ提供されなくなってしまう。

レストランでは、お客が食事中のときに接客者はサービス提供を行っていない。
基本サービスである料理を提供したところで接客の仕事が一度終わる。
しかしスポーツジムの場合は、接客を継続しなければサービスが終わってしまう。
スポーツジムは基本サービス提供と接客が100%リンクしているサービスである。

基本サービスを提供する接客で大切なことは、基本サービスが滞りなく提供されるかどうか、ということに尽きる。
基本サービスが提供されなくてはサービスが成り立たないので、ジムのインストラクターのように基本サービスと接客がリンクしているサービスほど、サービスにおける接客の重要度は大きくなる。

「しくみの役割」と「基本サービスの役割」を果たす接客の作り方

しくみとしての接客と、基本サービス提供としての接客は、仕事内容を消去法によって決める。
コンセプトに沿ってハード・基本サービス・しくみを順番に作り上げ、残った役割が接客の仕事、という決め方をする。
このシンプルな方法で、接客の役割をはっきりと決めることができる。

サービスを作り上げる上で、接客の役割はこうして決まる。
だから、新しいサービスを作るとき、一番最初に接客の仕事や役割を決めてしまってはならない。

接客からサービスを作ってしまうことは実はよくある。
接客の経験豊かなベテランが独立をするときや、利用者に喜んでもらう接客にプライドを持っている人が新しい店舗を任されるときによく起こる。

けれども、サービスはあくまで提供すると決めたものを提供し、約束を守るということにつきる。
基本サービスを提供するとき、接客はしくみがなければうまく役割を果たすことができない。
たとえばコックが料理を作って、ウエイターがそれを運ぶというオペレーションがなければ、接客はうまく役割を果たすことができない。

そのしくみは、「料理」という基本サービスが何であるかメニューが決まっていなければうまく働かない。
料理という基本サービスは、「店舗」というハードが作られていなければそもそも提供することができない。
ハード、基本サービス、しくみに先立って接客の役割を決めてしまうと、サービスの約束を守ることは途端に難しくなってしまう。

接客を先に形作ってしまうことがなぜ起こるのかというと、多くの場合接客者のプライドやホスピタリティ溢れる人間性、心配りのできる思いやりのある性格など、「いいこと」と考えられていることがサービス提供に反してしまうことに原因がある。

しくみは画一的、統一的なものである。
ルールはどうしてもそうなる。
基本サービスも画一的で統一である。
「できる約束」も、どうしてもそうなってしまう。

しくみや基本サービスは、サービス提供に不可欠だから、結果として、お客に画一的な結果を提供する。
画一的な基本サービスとしくみによって提供されるサービスは、お客に画一的な結果として届けられる。

たとえば、ガソリンスタンドではガソリンが提供されると決まっている。提供される手順も決まっている。
このことに抵抗を覚える接客者は少なくない。
お客に感謝されるような、高いコミュニケーションを行うことができる接客者であればなおさらである。
なぜならお客にはそれぞれの事情や性格、気分などがあり、画一的な結果が必ず良いとは言い切れないからである。
このような事情によって、すばらしい接客者はマニュアル化を避け、嫌う傾向にある。画一的、統一的なものがサービスを劣化させる原因だと考えてしまう。
そして個別対応を尊んで、それを実行しようとする。
この行為が実は「コンセプトの反映」「提供すると決めたものを提供する」というサービスの約束を破ってしまう。

どうしてサービスの約束を破ってしまうことになるのか、ということには理由がある。

このようなときの接客者は、サービスの核になっているコンセプトを自分の主観で判断する。
接客者の主観は、接客者同士で同じにはならない。むしろ違う可能性の方が圧倒的に高い。
個々の価値観によってコンセプトが解釈されるようになると、サービスは同じ意味や約束で提供されなくなってしまう。
昔と現在、ある接客者と別の接客者、ある価値観と別の価値観、などによって提供されるサービスが異なってしまうことになる。

約束が守られなくなったサービスは、長い目で見るとお客の信用を失ってしまう。
提供すると決めたものが提供されなくなり、提供するとは決めていないものが好意などによって提供されるようになると、提供されないお客は不満を覚えて不信感を抱いてしまう。

本当にすばらしい接客者は、ハード・基本サービス・しくみ・接客の手順を重視して尊重する。
それは、自分の能力やスキルによってサービスを支えているのではなく、自分がコンセプトとハード、基本サービス、しくみによって支えられていることを理解しているからである。
そのような接客に支えられたサービスは、強いサービスとして特にお客の喜びに注目しなくても、お客は信用してくれ、満足してくれる。

トップに戻るボタン