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第2の扉 - 卓越者が住む世界

真摯さを形作るもの


卓越する接客者が住む世界の入口にあり、はじまりにあるのが「真摯さ」である。
真摯さは、「まじめでひたむきなこと」「清く、正しく、美しく」とか、単に誠実であることなどと考えられている。
日本語の単語としてあまり使われることがないため、およそのイメージで考えられやすい。

真摯さとは、「真実を基準」とし、「誠実さを前提」とし、「貢献を目的」として、果たすべき役割を行うことである。
人に接するのに、まず自分がどのような価値観を持って接するのかという「心構え」は接客の出発点になる。
素晴らしい接客者が高いプロ意識と、強い責任感を「心構え」として持つのに対して、卓越した接客者は真摯さを「心構え」として原点にする。

プロ意識と責任感は「仕事」に対して持つものであり、真摯さは自分を含めた「人間」に対して持つものである。

真実を基準とする

真摯さが求める心構えはまず、接客者に真実を基準とすることにある。
ものさしがなければ長さを正しく測ることができない。
接客者はどのようなものさしを使って接客を行うのかを決める必要がある。
卓越する接客者の世界では、ものさしとして「真実」を使う。

本当に正しいこと、絶対に間違いがないこと。
人によって答えが変わらないこと。
正確な事実であること。
これ以上確認しても結果が変わらないこと。
さまざまなアプローチを試しても同じ結論に行きつくこと。

このような「本当の正しさ」を中心とした真実だけが、卓越した接客者にとって接客を行うときの基準になる。

これに対して素晴らしい接客者は「経験」をものさしにする。
このため、同じような成果を出す素晴らしい接客者の間で、「正しい方法」「正しい判断」に差が生まれる。
それぞれがそれぞれの経験の中から正しさを見出すので意見が分かれてしまう。
ある人はホスピタリティを基準に接客を測り、別のある人はお客を感動させることを基準に接客を行うようになる。

卓越した接客者は真実を基準にするため、自分の経験はもちろん、感情、気分、体調などでも物事を測らない。
結果が本質的に正しいかどうか決めることができない物事を基準にはしない。
これが真摯さの「基準」を支える真実の特徴である。

誠実さを前提とする

本当に正しいことを基準にしても、その人に誠実さが欠けていれば真摯であるとはいえない。
癌の告知をする医者が「あなたは間違いなく癌です。これから長い闘病生活が待っているので準備してください」と、こともなげにさらりと言ったとすると、その真実は暴力になってしまう。

確かに癌の告知はどのような言い方をしても相手にショックを与えるだろう。
しかし、それを伝える者に、誠実さがあるかないかによってショックの質が変わる。
その後治療を受けるときの気分を変え、病気と闘う気力を変える。

卓越する接客者にとって、誠実さは「前提」になる。
いざ事が起こったときに言い方や見せ方や行動に気を遣うのではなく、人として誠実であろうとするために誠実でいられる人のことを指す。
相手をいたわり、愛しみ、本気で思う気持ちを持つ人であるからこそ、真実を扱うことができる。

貢献を目的とする

そして貢献を目的にする。
相手をいたわり、愛しみ、本気で思うからこそ、目の前にある真実をお客に向けてどのように用いていくべきなのか。
何に向かって真実と誠実さを発揮するべきなのか。
自己満足のためでも、仕事をこなすためでもない。
顧客満足を得るためでもない。
「目の前の人に対して、今自分ができる精一杯を行う」ために発揮する。
これが貢献を目的とすることである。

しかし、お客に向かって行うものだけが貢献ではない。
卓越した接客者は、お客、事業、社会の3つに対して貢献する。
接客を行うとき、既にこの3つが視野に入っている。

事業に貢献するというのは、売上などの金銭的なものというよりはむしろ、サービスを形作ることに対して行われる。
自分は事業に対して何を精一杯行うことができるのか。
提供すると決まっているサービスを最も確実に提供し続けることや、トータルサービスを形作るサービスのしくみを接客サイドから構築するなどのことを行う。
それも常に行う。
接客によって事業を支えることが、事業に対する貢献になる。

接客によって事業を支える接客者は知識労働者である。
サービス上必要な高い知識でサービスを支え、接客スキルなどを教育する人事を支え、接客を中心に事業マネジメントを作り上げることで事業に貢献する人のことを知識労働者という。
これに対して、事業に支えられて仕事をこなす者のことをサービス労働者といい、この2つのタイプは事業への貢献によって分けられる。

社会に対しての貢献は抽象的である。
ボランティア参加などのことではなく、サービスの提供を通じて接客者は社会貢献する。
宿泊施設の接客を仕事にしているのなら、旅行者が安心して快適に寝泊りすることができるということが、社会的に大きな貢献を果たしていることになる。

しかし卓越した接客者はむしろ、社会のためにならないことを絶対に行わないことで社会に貢献する。
卓越した接客者である税理士は、お客がどんなに求めても脱税を勧めることはしないだろう。
もしお客に脱税の事実があれば、誠実に、かつお客に貢献する方法で脱税を止めるに違いない。
彼らは、行ってはならないことを行わないことで社会に対して貢献する。

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