Esmose

コラムを読む

第1の扉 - 卓越者は強みよりはじまる

素晴らしい接客者個人の特徴

素晴らしい接客者は個人として仕事とプライベートを分ける傾向が強い。

メリハリをしっかりとつけ、両方に対してけじめをつける。
もちろん仕事に対しては強い責任感で挑む。

しかしプライベートにまで仕事を持ち込み、仕事のことを考えて休日を過ごしたいとは思わない。
休日に自分が接客を受ける立場になることがあると、職業病のように相手を評価してしまうことはあっても、できればなるべく嫌な経験を忘れ、リラックスして過ごしたいと思う。

これは能力を軸にした接客の仕事が、「好き嫌い」「できるできない」に関わらず半強制的に能力を要求するために起こる。
強制的に何かを習得しようとすると、人はストレスを抱える。
だからプライベートまでそのストレスにさらされたいとは考えないし、現にそれでは体がもたない。
接客以外の仕事を行う人も同じように、仕事を離れるものがプライベートであって、多くの場合プライベートは自分らしさを取り戻すために使われる。

それでも素晴らしい接客者は、やはり「人と接することが好き」「お客さんに喜んでもらえれば自分も嬉しい」という人が多い。
人と接することが嫌いで、会話が苦手な人はやはり接客には向かない。

素晴らしい接客者は能力を身につけて素晴らしくなることについて、自分の歩んできた経験を重視する傾向が強い。
下積みに3年かかったのであれば、後輩に対しても下積みは3年必要だと教える。
はじめてお客にねぎらいの言葉をかけられたときに自分自身の成長を認められるようになった人は、お客に感謝されるようになるまでは一人前ではないと考える。

また、「努力」に対してはかなりの接客者が重視する。
なぜなら能力は「好き嫌い」「できるできない」にかかわらず身につけなくてはならず、だからこそ部分的にであっても必ず苦労を伴うからである。
何かのスキルをなかなか身につけることができないとき、人はその物事を嫌いに思いながら、しかし継続して反復しなければ並のレベルになることができない。
苦痛を抱えながらも一生懸命頑張るしかない。
この状態を熟練した後になって振り返ったとき、その行動をまとめて「努力」と呼ぶ。

そして仕事を上手くできるようになるためには「努力」が必要であると考えるようになる。
悪くすると、仕事が上手くできない接客者に対して「努力が足りない」などと決めつけてしまうこともある。

逆に、たまたま才能があったためあまり苦労せずにできてしまった物事に対しては、誰か別の接客者が同じことは上手く行うことができないとき、「どうしてわからないのかがわからない」などと突き放した考え方をすることがよくある。
つまり能力を身につけた人は、身につけることが上手くできたとしても、逆に苦労したとしても、自分の経験を元にして他の接客者を評価し判断する傾向が強い。
これは実は、「人の気持ちを考えることのできない2つのタイプ」の両方のパターンに当てはまる。

人の気持ちを考えることのできない人は、このような2つのタイプがある。

ひとつは、幼い頃からほしいものは何でも与えられ、要求することが何でも通り、それが当たり前だと思って生きてきた人のことである。
この人は、大人になっても自分を中心に世界が回っており、自分の思い通りになることがイコール「良いこと」である。
自分の気持ちと気分が第一で、人の気持ちなどこの人の世界には存在しない。よって人の気持ちを考えることが本質的にできない。

もうひとつは、ひとつ目のケースとは全く正反対で、昔から何者も手に入れることができず、人よりもはるかに苦労し、つらい目に遭ってきたタイプの人である。
この人は、苦難を努力で乗り越えて、幸せや欲しいものを自力で手に入れてきたため、不幸な人や悩んでいる人、苦しんでいる人を見て「努力が足りない」「頭を使わない」などと決めつけてしまう。
このため、人の気持ちを考えることが経験からできなくなってしまっている。

仕事からはじまる能力の接客は、このような接客者を作ってしまう恐れがある。
素晴らしい接客者の中にもこのようなタイプの人はいる。
あるスキル・技術をいとも簡単に身につけてしまうことができると、ほしいものを何でも与えられた子のように、それを身につけることができない人の気持ちをなかなか汲むことができない。
逆にスキル・技術の習得を努力と継続によって身につけた人は、努力で人生を乗り越えてきた多くの人がそうであるように、上手くできない人を見て責めてしまう。少なくとも不満を覚える。

素晴らしい接客者による素晴らしいサービス

能力を軸にした素晴らしい接客は、いくつかの問題を抱える可能性はあるものの、必ずしもそれが悪いということではない。

素晴らしい接客に支えられた素晴らしいサービスは、数は少ないながらもちゃんと存在している。
それは、サービスを形作るサービスマネージャーなどが、接客の能力に差を出さないように、あるいは高いレベルで誰もが維持できるようにしているからである。

その方法はサービスコンセプトを徹底して身につけることや、能力を単純化してマニュアルに落とし込むとか、先輩が後輩に教える方法をルール化するなど、いくつもの手段と考え方があるが、それは接客とはまた別の話になるのでここでは触れない。

素晴らしい接客は、たとえそれが技術であるとしても、高いコミュニケーション、親身なホスピタリティ、的確な問題解決を私たち(お客)に与えてくれる。
それはやはり素晴らしいのであって、私たちはその接客に満足し、ときに感動し、感謝することすらある。

それでは卓越した接客が、その素晴らしい接客と本質的に何が違うのかということを見ていこう。

トップに戻るボタン