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サービスの選別

良い接客は良いサービスなのか

「最近受けた素晴らしいサービスを3つ挙げてください」
この質問を少し考えてみてほしい。
もし3つ浮かばないのであれば1つでも構わない。

この質問をして、多くの人が答える回答は「接客」であることが多い。
どこどこのお店で店員さんが良くしてくれたとか、対応が素晴らしかったということを私たちはイメージする。
接客が良いイコール、サービスが良いと考えている。

もし良い接客がそのまま良いサービスになるのであれば、私たちはお客として良い接客を「感じなければならない」ということになる。
良い接客を感じなければ、サービスを良いと評価できないからだ。
そこで次の話を考えてみてほしい。

新幹線にはお弁当やドリンク、お土産などをカートで販売する添乗販売員がいる。
この添乗販売員という接客者の中に、他の販売員の3倍売上を上げる接客者がいるという。
彼女は新幹線に乗る前に準備をする。
今日のお客は家族連れが多いのか、高齢者が多いのかなどの傾向をよく観察する。
そして、家族連れが多ければカートの上段に菓子類を目立つように配置し、高齢者が多ければ弁当類を目立つように並べ替える。
カートの速度に気を配り、購入を迷っているお客の目線に注目し、そのお客が購買したいと考えたとき、通り過ぎてしまった後にならないように気を遣っている。

まず考えてほしいのは、この接客者はすばらしいかどうかということだ。
お客の嗜好に合った商品を目立つ場所に配置し、お客が買いたいと思ったときに買えるように速度を調整する。
客観的に見ても売上が他者の3倍であることを考えてみると、この接客者は相当素晴らしい接客をしていると考えていいだろう。
しかし、この接客者の接客がすばらしいと果たして私たちは気がつくだろうか。

最初からカートにほしい商品がある。
ほしいと思ったときに買うことができる。この状態はお客から見て「あたりまえ」でしかない。
良い接客であるとも、すばらしい接客であるとも気がつかない可能性はきわめて高い。

むしろ、目に見える良い接客を行うのであれば、会話に頼った方がいい。
お弁当を購入したお客に「温かいお茶はよろしいですか」とか、なるべく1人1人に「何か必要なものはございますか」などと声をかけた方が、お客から見てはるかに親切に「映る」
しかし、である。
新幹線でいちいち声をかけてほしい人が一体どれほどいるだろうか。

地味な接客者を見つけることができるか

良いとわかりやすい接客は、目に見えるコミュニケーションに頼ることが多い。
たとえば、弁護士や医者など、困っている人を助けるサービスは会話や実行が大きく物を言う。

これに対して、あらかじめお客の負担を減らし、準備をしておくことでサービス提供に臨む接客は地味だ。
はじめから滞りなく仕事を行うことができ、お客に余計なプレッシャーや手間をかけさせない状態を用意する接客は、実はコミュニケーションを駆使する接客よりも優れている。
つまり、良いと感じる接客が必ずしも良いサービスであるとはいえない。

コミュニケーションで相手を喜ばせる接客者を悪いとはいえないものの、本当に素晴らしい接客者は、実は地味であることが多いということである。
ということは、確実な仕事を行う接客者に支えられたサービスは、良いサービスだと考えることができる。

つまり、このような接客者を見つけることができるということは、イコール良いサービスを見つけることができたということになる。
バースデーケーキがろうそくで飾りつけされているということになる。
そのようなサービスはお客にとって信用に値し、私たちは気持ちよくサービス利用することができるのだ。

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