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3章 - 木から枝葉が育つ

強みを使いこなす「卓越者」

 

オステオパシーという治療の技術がある。

1874年アメリカでアンドリュー・スティル・テイラーという偉人が提唱した治療法で、治療手段として手を使う。
オステオパシーでは体を全体として捉える。痛みの部分を治療する(西洋医学)のではなく、痛みの原因となっている根本的な部分(主に間接)と体全体のバランスを整え、自然治癒力を高めるという考え方をする。

現在では治療法も様々な手法が生み出されている。
その様々な手法を使いこなし、患者を個別化して治療する名医が東京に1人いる。
私は彼の治療を6年受けた。

最初は10年来にわたる偏頭痛をどうにかしたい気持ちで訪れた。
しかし10年間何の努力もしなかったのかというとそういうことではなく、東洋医学、漢方は独学で学んだし、針治療、マッサージはどちらも数種類試してみた。
しかし完治はしなかった。

それがこの名医にかかることで嘘のように痛みがなくなった。

強みを使い、最大限に生かしている人は、その分野において卓越する。
卓越者となって誰も真似することができない成果を打ち出す。

卓越者であるその名医は、治療時に強みを2つ発揮している。
1つは「根本的な原因を特定できてしまう力」で、もう1つは「(相手の状態と無数の治療法を)マッチングさせる力」である。身体に悪影響を及ぼしている根本的な原因は、通常教科書に書いてある症状に照らし合わせて特定する。
オステオパシーではたとえば仙骨や背骨や骨盤が曲がっていないかどうかなどを基準にする。
しかし彼は、あるときはお腹(内臓)に手を当てて状態を診るかと思えば、背骨をチェックすることもある。患者を一目見るだけで「右半身の状態が悪い」と断定することもある。頭を触って脳のストレス具合を判別することもある。
要は、根本的な原因がどこにあるのかを一瞬で感知する。

もう1つの強みはその後に使われる。
無数の治療法の中から、その日その患者の状態に最も適切な治療法を抜き出して治療に当たる。いつも必ず特定の治療を施すわけではない。
私が体の定期メンテナンスを行う目的で6年間通った中でも、6年目にはじめてつかうスキルがあったこともある。

この2つの強みを使って、たとえばぎっくり腰で運び込まれたおばあちゃんを40分治療し、徒歩で帰らせるまでに回復させる。
1日14タームの治療枠の予約が1ヶ月先まで全て埋まっている。
しかも宣伝広告は一切行っていない。全て口コミである。

この名医のような卓越者は、自分の持つ強みを複数同時に使うことが多い。
彼にしても、もし「根本的な原因を特定できてしまう力」しか使うことができなければ、強みを使いこなす卓越者にはなれなかっただろう。

強みを使いこなす人から、私たちは「強みは複数同時に使われなくてはならない」ということを学ぶことができる。
もし、強みを生かした仕事をしたいと思うのなら、自分が持つ強みを自覚した上で、その中の2つか3つを同時に生かすことができる職を探した方がいい。

さらにこの名医のように強みを使いこなすには、能力レベルが高い必要がある。

オステオパシーでは手で全ての治療を行うために、指先の感覚が敏感でなくてはならない。そのため、たとえば電話帳にはさんだ髪の毛を指で感知する訓練を行う。
最初は1ページ向こう側の髪の毛がどこにあるのかを探る練習をして、どんどんページ数を増やす。達人のクラスになると200ページ向こう側の髪の毛の位置を正確に捉えることができるようになる。
その感覚が骨や内臓、神経の正しい位置と状態を感知する。

これは技術なので強みではなく「能力」になる。鍛えた能力が強みによって発揮されることで強みはさらに生かされる。

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