環境が強みを許さないこととは別に、強みがわかっているけど具体的に何をやっていいのかよくわからないということがある。
ビジョンがなく行動に悩むときだ。
ビジョンがないというのは、たとえばどんな仕事を選んでいいのかわからないというような場合のことで、未来に対してうまく自分の姿をイメージすることができないことをいう。
ほとんどの人は、何か熱中できるものや好きなことを見つけなければ自分の価値が問われるような気持ちになる。
仕事をしていなければ収入を得られないということ以上に、「仕事すらしていない人」というレッテルを恐れることもある。
こんなときに人の心の中は焦りが支配している。
自分で抱え込むことが苦しくなって人に相談すると、真っ当な社会人である友人や先輩や親は、口をそろえて非難する。
そしてさらに焦りが生まれ、悪循環に陥る。
そして安易な解決方法や、安心できる方法を行うことで心の均衡を保とうとする。これが強みをダメにする悪魔のツールの2つ目である。
ではビジョンがないとき、強みを持つ人はどのようにすればいいのか。
レオナルド・ダ・ヴィンチは、イタリア中にその名前が知れ渡る以前から、水の流れや人体の筋肉の構造をスケッチしていた。 彼は生涯を通じて本質的な構造に強い感心を抱いていた。 人体の構造は肉体を切ることで中を見なければわからないので、宗教的に禁じられていた死体の解剖を行ってまでスケッチを行った。 彼は「本質的な構造」を追及する強みを持っていた。 |
レオナルド・ダ・ヴィンチは有名人になる前から、この強みを行っていた。その頃の彼にビジョンはなかったと思われる。
あるいは、あったとしてもその後の彼の人生を見る限りその思い通りになったとは言えないだろう。
晩年の彼は軍事技術の専門家としてイタリア内各国を渡り歩いていた。
それは目標ではなかった。
大切なことは、彼が無名であった頃から、そしてビジョンがなかった頃から、強みだけは使っていたということである。
考えてみてほしいが、人から見ていつまでもいつまでも川の流れをスケッチしている人や、死体を切り刻む人をして「だから成功する」などと思うことができるだろうか?
しかし彼は「本質的な構造」にこだわりを持って、そのためのスケッチを続けた。
晩年システィーナ礼拝堂の天井にミケランジェロが書いた画を見て彼はこう言ったという「老人と若者の筋肉が同じなのはおかしい」と。
強みを生かす人は、現在ビジョンがまだない時から強みを生かす。有名になり成功したから強みを発揮するのではない。
だから私たちは強みを生かした人から、まだビジョンすら持てない頃から(誰にどう評価されようとも)自分が持つ強みを生かせばいい、ということを学ぶことができる。
逆に言うと、そういう人でなければ強みを生かすことで成果を得ることができない、ということになる。