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1章 - 虎はなぜ強いのか

「できてしまう」と「できる」の違い

 

「できてしまう」を説明したり伝えるのに苦労するのは、「できる」ことと何が違うのかということで、最初の頃はどう説明するかしばらく迷った。
今では「強み」と「能力」の話をするようにしている。

「強み」ははじめから「できてしまうこと」。
「能力」は「できるようになること」だ。

「できてしまうこと」は最初からできてしまうので、努力や訓練が必要ない。虎がもともとから強いのと同じである。

「できるようになる」というのは、はじめはうまくできないけれども、努力と訓練でうまくできるようになるということで、スキルや技術などはここに含まれる。

人が能力を身につけるのは、その人が属する社会がそれを求めているからで、社会の荒波をうまく泳ぐために「できるようになる」必要がある。
「手に職」や「資格」などがそうで、コーチングなどのコミュニケーションや営業のプレゼンテーションスキルも同じである。

ところが「強み」はできてしまう特徴があるので、いつも「自分から」はじまる。
社会で必要かどうかとか、誰かに評価されるかどうかとか、偉業を残すかどうかとか、そういうことはひとまず関係がない。

だから強みにはストレスと競争がない。
全部自己完結してしまう。

能力は自分からはじまるのではなく、外の世界の求めに応じて身につけるものなので、たとえ自分でそれを選択したとしてもストレスとその結果としての競争にさらされる。

たとえば、エジソンの話を聞いたことはないだろうか。

エジソンが白熱電球を発明したとき、フィラメントの素材が決め手になった。フィラメントは白熱電球が輝くまさにその部分のことで、エジソンはこのフィラメントに適した素材を探すために実験を重ねた。
その回数実に12000回だという。

その実験の途中でエジソンが「失敗ばかりだ」と言われたことに対して「またひとつうまく行かない素材を発見した」と答えた。

そして最後には日本の竹がフィラメントに最も適している素材として採用されるに至った。

(注:正確には白熱電球の発明者はJ.W.スワンとされている)

自己啓発書などにはこの例を挙げて「だからあきらめてはならない」とか「できるまでやる」ことの大切さがよく説かれている。

だがもし、今白熱電球に変わる発明が自分の目の前にあるとして、しかも12000回実験を繰り返せば必ず発明できるとわかっているとしても、私ならそれをしない。向いていない。

もしやったとしたら、ものすごいエネルギーのストレスが生まれることは間違いない。
周囲にきっと迷惑をかけるだろう。
そして最初の1000回目できっと失神するに違いない。
能力を一生懸命生かすときにこういうことが起こる。

エジソンが生涯1300点に及ぶ発明に没頭し集中できたのは、それが強みだったからである。
12000回実験を繰り返して最後に日本の竹を採用したのもそれが強みだからだ。

「あきらめない」「できるまでやる」でやったのではない。
繰り返す実験が「できてしまう」から「できてしまった」のだ。

ストレスなどほとんど感じていなかったということは、彼のことを調べてみればすぐにわかる。

強みを使うとき、人はストレスを感じることなくそれが「できてしまう」

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