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3章 - 木から枝葉が育つ

ピラミッドを作り上げる強みを使う人

 

私の友人にロンドンの大学院で建築を学び、同じくロンドンの会社を経て現在は香港で活躍する建築家がいる。

彼には「人にわかりやすく説明できてしまう」という強みがある。
気がつくと求めてもいないのに説明がはじまる。
しかしそのことに全く違和感はない。
説明自体はとても分かりやすく明瞭で、シンプルである。
こんなに簡単でいいのかというほど単純で、長くない。

しかしその説明を聞いた後は必ず「聞いてよかった」という気持ちになる。

私が彼を訪ねていくとこのマジックのような説明がいつも子守唄のように心地よい。ロンドンでは大観覧車のゴンドラがオランダで、フレームはイタリアでそれぞれ造られたという話が知識欲を満たしてくれた。
香港では彼のアパートでお勧めのバーがどんなに素晴らしいかを語ってくれるし、一昔前にはスケッチブックに書かれた法隆寺の木造の骨組みが、どのような力学のしくみになっているかという難しい話を非常にわかりやすく話してくれた。

がしかし、この強みが仕事に発揮されているという話はあまり聞かない。
せいぜい職場の人間関係に使われているのだろうと予想できる程度でしかない。

もちろんクライアントに好かれるというようなメリットもあるに違いない。あるいはプレゼンテーションで生かされていると想像することはできる。
プライベートな人間関係には強く生かされているだろうと思う。
こんなに説明がうまく、心地よい人を他に見たことがない。

しかし仕事においてはまた別の強みが使われている。
「ひとつひとつ作業を行い『大きなものを』造り上げる力」という強みが彼にはある。

彼の建築会社が関わる仕事はアジア中に広がっているが、一大リゾート地を更地から計画したり、商業都市を丸々作るというような大規模の仕事を行う。

そこに求められるものは、決して失敗しない堅く確実な仕事であり、独創性や思い切りの良さではない。
かといって言われたことを行うだけの仕事が評価される世界でもない。

彼はピラミッドを積み上げるように確実に仕事をする。
しかしその視点はピラミッドの完成図か頂上を向いており、目の前の石を運ぶ作業に集中してはいない。
これが彼の持つ強みと仕事の関係になっている。

彼の成果は「造り上げる」ことにあり、彼の仕事は「ひとつひとつ行う」ことにある。
成果と仕事が明確なので、それに沿って強みが使われている。

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