Esmose

コラムを読む

4章 - 朝顔は朝に咲く

弱みを克服しようとしてはならない

一般常識を持ち合わせた社会人は、決まってこう言う。

「3ヶ月で何がわかる」「社会を舐めている」「そこで踏ん張ってこそできる自分になる」などなど。

しかしそれらの発言は経験則であって事実ではない。

弱みというのはただ単に「やりたくない」という感情や、「できない」という能力のことではない。
強みの発揮を阻み、無力化してしまう物事である。

ここで脳の構造を思い出してほしい。
シナプスの集まったところが強みになるという話を覚えているだろうか。

人間の脳は3歳頃から情報の選別をはじめ、必要だと認める情報を処理する脳の部分が発達し、逆に不必要だと判断した情報を司る脳の部分は使われなくなる。電気信号が流れなくなる。

つまり「弱み」を克服することはできない、のだ。


 

脳の構造や、脳科学を学んだ人なら「正確にはそんなことはない」という人もいるかもしれない。

確かに、弱みの部分が行う情報処理は、現在発達しているシナプスを電気信号が通って処理することはできる。
しかしその部分が発達した人が一気に情報処理するのとは異なって、発達していない人は他のシナプスの道を迂回し、経由して処理すべき情報の答えを見つけ出そうとする。

いきなりうまくできる人はAからBへの道をまっすぐ通るが、うまくできない人はAからBに至るまでに、自分の得意なC,D,E,F,G,というルートを経由する。
こういう脳の使い方は非常に消耗が激しく、ストレスを生み出す。

たとえば、人とのコミュニケーションが得意な人は往々にして数字計算や数値に置き換えて物事を判断することが苦手な傾向にある。
逆のパターンでもいいが、これを克服しようと頑張ったときのことを考えてみてほしい。
非常な苦痛とストレスを伴うことが予想できる。

しかも、弱みは克服されても「絶対に」強みになることはない。
自分を殺して最大限頑張っても、成果は「中の上」程度にしかならない。

別に脳の構造を説明しなくても、私たちは子供の頃から経験でこのことを知っている。

だから強みを生かしたい人は自己啓発でよく言われる目標設定、ポジティブ思考、優先順位、目標を書き落とすことで弱みを克服できると安易に信じないようにしてほしい。
それらのスキルや能力は、強みを生かすために使うようにしたい。

私たちはいくつかある弱みに対して、ストレスを抱えながら努力している人生の時間はほとんどない。
そんなことをしている時間があるのなら、自分にしかできない強みを発揮した方がいい。
でなければ、なぜ自分にしかない強みを持って生まれてきたのかの意味がなくなってしまう。

だから弱みは克服するのではなく、カバーされなくてはならない。

ファッションデザイナーのジョルジオ・アルマーニは40歳のときに自社ブランドを立ち上げ、独立した。そのきっかけとなったのは、セルジオ・ガレオッティが「君はもっと評価されるべきだ」と発言したことだが、実際にアルマーニがマネジメントされたのは、ジョルジオ・アルマーニがファッションデザインしたことと共に、セルジオ・ガレオッティがビジネスやマーケティングに長けていたからだ。

ジョルジオ・アルマーニが抱えるビジネス上の弱みを、セルジオ・ガレオッティが満たすことでアルマーニは強力なブランドを作り上げることができた。

反対にダナ・キャランはダナ・キャラン本人がブランド戦略とビジネスを担当したことによって経営不振を招いた。
結果フランスのLVMH傘下に入ることを余儀なくされた。

 

他の誰かの力を借りるのもいいだろうし、仕事なら外注するという方法もある。
実際に接客の仕事をする人たちから「掃除」を省いてアウトソーシングしたところ、接客のパフォーマンスが上がったという例もある。

「弱みは克服するのではなく、カバーする」これをよく覚えておくようにしてほしい。

 

トップに戻るボタン