Esmose

コラムを読む

5章 - 悪魔のツールを退ける

悪魔のツール対策6 – 強みと混同してしまう、惰性と心理反応

強みをダメにする悪魔のツールの最後は「強みと惰性・心理反応を混同すること」にある。

惰性・心理反応はどちらも強みではないのに「できてしまう」という特徴がある。
このため強みと間違えやすい。

惰性は当たり前に「できてしまう」のだが、強みとは違って悪習慣の積み重ねで自動的にできてしまうものである。
物事を「選ぶ」のではなく、目先の「安心」を得るために自己説得(といういいわけ)をしているものが惰性である。

たとえば、タバコがやめられないだけなのに「ストレス解消になる」などと自己説得している悪習慣が惰性である。
これは「タバコを吸い続けることができてしまう」という強みではない。

私が雇っていたことのあるある従業員は、仕事上の決断を迫ると必ず「よく考えさせてください」と言って数日間悩んで結局決断しない、ということがよくあった。彼女は決断するべき物事を慎重に考えることができる強みがあったのではなく、時間を稼ぐことの有利さを直感で判断したのでもなく、ただ決断する能力が欠落していたために都合の悪いことはなるべく関わらないようにする名人だった。

こういった惰性に時間をかけ、強みの発揮には消極的だったため、一緒に仕事をするのは難しいと考えお互い一緒に仕事をしない方法を取ることにした。

 

この場合の自己説得は「私は一生懸命その物事を(3日間も)考えているんです」というパフォーマンスにある。
客観的に見ると時間を無駄にしているだけだが、本人はこの習慣を積み重ねているので心からそう思って実行している。
これが惰性の代表的な例だ。

心理反応も強みとは異なる。

心理反応は例えば「これまで付き合っていた人とはいつも喧嘩別れしてしまった」「私は上司に恵まれたためしがない」など、なぜかいつも同じことが起こってしまうと本人は信じているが、実は自分の心理的な反応がその物事を引き起こしていることである。

普通に考えれば恋人と別れるにしても、上司に恵まれないにしても、そのパターンはいくつものケースがある。
誰にでもそのいくつものケースが当てはまる可能性がある。
むしろ、同じパターンだけが続くことの方が確率的にも実質的にも難しい。

「恋人に恵まれない」「男(女)なんて信用できない」という責任転嫁(といういいわけ)をするものが心理反応である。
「ダメな恋を見分けることができてしまう」という強みではない。

かつて私がマネジメントしていた会社にとても仕事ができる人材がいた。
彼女は仕事の成果を生み出すことができたので速いペースで昇進した。
「視点を全体に展開することができる」「要点をつかんだ上で自分のオリジナリティを生み出す(加える)ことができる」という強みもあった。しかしいつしか他社の社長が私(その人)にセクハラをした、仕事が終わったあとに社員を集めて自分中心のミーティングをしているなどの噂が立った。
最初は噂に耳を貸さなかったが、噂程度にしては量が多くなったことに不振を感じて裏づけを取った。

するとその裏に彼女の心理反応によって生み出されたデマがいくつかあることがわかった。
私は彼女の話をよく聞く機会を設けて話を聞いた。
すると「小学生時代から今日までずっと仲良くなったグループからある日突然仲間はずれにされる」という事実があることがわかった。

その原因を聞いてみると「わからない」。
いつも必ずそうなるかと聞いてみると「必ずそうなる」と答えた。
心理反応の顕著な兆候が出ていた。

私は彼女を傷つけないように、問題は問題として、強みは強みとして話し、今後私たちの間で得るべき成果について伝えることを伝えた。
しかしその日の晩に個人集会が開かれたので、やむを得ず解雇した。

 

この場合の責任転嫁は「誰かが私を悪者にしようとしている。
私のようないい子に妬みを持つ人がいる」というものだった。

彼女は控えめに見ても仕事上は有能で高給を取るに値する人材だった。
しかし昇進すればするほどこの心理反応は過激になり、強みが生かされなくなってきたので一緒に仕事をするのは不可能だと判断するしかなかった。

これが心理反応の代表的な例である。


 

強みをダメにする悪魔のツールは6つあるが、実はどれも自分の心の中に巣食う物事の捉え方に由来している。

知らないうちに自分で「強みを発揮できない」と決めてしまったり、「○○のせいで強みは使えない」と信じてしまったりしていることが数多くある。

せっかく発掘した強みは、世の中で他の誰も持つことができない貴重な資産なのだ。
それは自分自身で大切にしなければならない。
他の人があなたの強みを見て「すごいことだ」と気がついたとしても、彼らには絶対にそれを生かすことができないのである。

強みを生かすことで唯一の卓越者になることができるよう、「強みをダメにする悪魔のツール」を退けるように頑張ってほしいと思う。

トップに戻るボタン