05.演劇と台本の関係

正しいしくみを持たないサービスは、ベテランの脇役がいない演劇のようなもので、味気も色気もない。
そのような演劇は誰も見たいと思わない。

サービスを演劇に当てはめて考えてみると、ハードが舞台。
基本サービスは主人公。
しくみは脇役になる。
そしてその演劇をうまく運ぶための台本が、サービスではマニュアルとなる。

主人公が演劇で何を話しどのような動作を行うかが決まっているように、脇役の役割も台本によって決まっている。
基本サービスとして何を提供するかが決まっているように、しくみが何を行うのかということも決まっている。

台本を無視してアドリブで演劇を行う役者がプロとしては失格であるのと同じで、マニュアルを無視したオペレーションはサービス失格である。
演劇と台本の関係は、サービスとマニュアルの関係と変わらない。
台本に書かれていることはそれぞれの役者の役割であるのと同様に、マニュアルにはトータルサービスを作り上げる役割、つまり「しくみ」が書かれる。

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マニュアル作りにも重要なポイントがある。

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マニュアルは、コンセプトでは目が行き届かない細かい部分を測る「ものさし」の機能がある。
コンセプトは法(憲法)、マニュアルは法律(六法をはじめとする各法律)と置き換えてイメージできる。

コンセプトはサービスを正しく測る基準になる。
やっていいこと、やってはいけないことを考える場合の核になる。
一方のマニュアルは、ある物事を行っても行わなくても悪いということはなく、行ってもサービス提供に影響はない、という判断の難しい細かい部分に対して、なぜ行うのか(行わないのか)決定する。

コンセプトではカバーしきれない細かい部分を補うマニュアルの目的は、統一することにある。

マニュアルを作るとき「サービス提供するとき、提供者であれば誰もが必ず統一することは何ですか?」という質問に答えることが一番大切で、その答えがマニュアルの内容になる。
ということは、正しいマニュアル作りは、やはり

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になる。
なぜなら、「統一されること」は結局コンセプトを基準として決めるからである。

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たとえばファミリーレストランやコンビニの場合、接客者のトークが統一されている。
会計終了後に「ありがとうございました。またお越しくださいませ」という発言を行うように決められている。
その味気のなさや挨拶をマニュアル化することに対して、好意的でない声はよく耳にする。
しかしサービスコンセプト反映という視点で見てみると、ファミリーレストランもコンビニも「統一すると決めたこと」がマニュアルに反映されているということがわかる。
その結果、結局はマニュアルによって滞りなく基本サービスが提供されている。

コンセプトを正確に反映し、基本サービスを滞りなく提供するために挨拶の統一が必要であれば、それはお客の気分に左右されずにマニュアル化する。

統一するべきことが多ければマニュアルは厚くなり、比例してサービス提供の状態が画一的になる。
大量のサービスを提供するときや、ミスの許されないサービスを提供するとき、厚いマニュアルは上手く機能するだけではなく、必然になる。

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自動車メーカーの自動車製造マニュアルは必ず存在し、厚いものであると相場が決まっている。

道路工事や障害者補助を扱う公共のサービスもかなりの細かいところまでマニュアル化されている。
人の命が関わるなど間違いが許されないからである。

こういった間違いの許されないサービスでは統一するべきことが多く、マニュアルは厚くあるべきで、細部まで検討され、取り決めはしっかりとしていなくてはならない。
サービス提供の責任上その義務がある。

統一することが少なければマニュアルは薄くなる。
反比例してサービス提供の自由度が広がる。ルール化の必要性がなくなる。

たとえば果物を提供する八百屋などの、単純提供できるサービスによく見られる。
小規模のサービス提供者も取り決めが少ない。
ピアノの先生は、個別コンセプトよりもコミュニケーションによってサービスを提供するので、物事の対応もしくみやマニュアルではなくコミュニケーション、つまり接客によって行う。
このようなサービスにとって統一するべき物事は少なく、マニュアルの必要性は限りなく低い。

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それぞれの事業形態や規模、責任などを考慮に入れてしくみを言語化する、つまりマニュアルを作ることで、正しいしくみ作りを行うことができる。

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04.取り入れてはならない3つの視点

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他社のサービスを取り入れたり真似をしたりすると、しくみにコンセプトが反映されなくなってしまう。

サービスが良いことで有名な他者のサービスやオペレーションが魅力的に映るというのはよくわかる。
実際のところ、それを真似し取り入れることはそう難しくはない。
いとも簡単にできてしまうこともある。
ただしうまく機能したという話を聞いたことがない。

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他社でそのオペレーションが上手く機能するのは、サービス提供者がコンセプトに忠実に、そのサービスを利用するお客の求めることに応えることでしくみ作りを行っているからである。
そういった前提を考えずに、表面上のしくみを取り入れてもうまくいかない。

たとえばビジネスホテルはリッツ・カールトンのしくみ――レセプションにレセプションの表示がない、トイレの表示がないが従業員がいち早く気がついて案内する、宿泊者の食べ物の好き嫌いは記録される――などというしくみを取り入れてはいけない。
ビジネスホテルにはビジネスホテルのコンセプトがあり、ハードがあり、基本サービスがある。
そのサービスに最も適したしくみを作らなくては作ったしくみとサービスの組み合わせがバラバラで、お客は不満を感じてしまうことになってしまう。

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他のサービス提供者のしくみを取り入れていいのは、コンセプトとお客の求めるものが限りなく近いときだけにする。
そしてできれば、そのしくみどおりに運営すれば、サービス提供に貢献するとわかっているときだけに限りたい。
しくみの構築はコンセプトの構築とは違って、オリジナリティを追及しない。
全ての目的は効果と結果で、トータルサービスに貢献するしくみは積極的に取り入れて構わない。

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ディナータイムに、行列ができるイタリアンレストランを経営していると想像してほしい。
並んで待っているお客に喜んでもらうため、一杯のワインを無料で提供するというしくみを作る。
するとお客は待ち時間(サービス提供前)に退屈せずにストレスを軽減されて待つことができるようになる。
これはしくみを作る考え方として間違ってはいない。

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しかし、トータルサービスにどのような影響があるかということが深く考えられているとはいえない。
その後提供される基本サービスに対して、その行為がかえって邪魔になったり、足を引っ張ったりする可能性がないかどうかということが考えられていない。

先に飲む一杯のワインが、料理の味のバランスを崩してしまうかもしれない。
お酒に弱い人が席に通されたときには、気分が悪くなるかもしれない。
逆に、大きな声で笑い出して店の雰囲気を壊す可能性も考えることができる。
または、そういったことは杞憂に終わり何事も起こらないかもしれない。

しくみは顧客満足を中心にではなく、

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に考えなくてはならない。
「たぶんだいじょうぶだろう」「多くの人が喜ぶんだからいいじゃないか」という基準で決めてしまうと、それに当てはまらないお客が不満を持つことになる。
もちろん、基本サービスを基準にしても不満を持つお客は出てくるかもしれないけれども、それは提供すると約束したサービスを提供するために、忠実に決めたことであるのでコンセプトを貫いていい。

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顧客満足は「お客が喜ぶこと」を中心に何を行うかを決める。
サービスの提供は「お客が確実にサービス利用すること」によって何を行うかを決める。

顧客満足は良いことを行う気持ちで行動し、サービス提供は必ず提供するという約束で行動する。

サービスで何か(しくみ)を決めるときは、良いことを行いたいという感情よりも、確実にサービスを提供するという約束を優先するようにする。
サービスにとって「良いこと」というのは必ず提供することなので、サービスのしくみ作りも

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する。

しくみを決定するとき、「親切心で行うことが実はサービスをダメにする」という可能性を考えるようにしたい。
さらには「親切心で物事を行う」という考え方ではなく、「サービスを最も良い形で提供する」ことを中心にしくみを作るようにする。

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しくみを作るときに良く考えられていないと、不備が起こってしまうことがある。
たとえば、予想よりもより多くの人がサービスを利用したとき、しくみがサービス提供を阻む壁になることがある。

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小規模なサービスでは、丁寧さや緻密さ、速さ、コミュニケーションなどによってお客が支持することがある。
このようなサービスは、利用者が増えれば増えるほど、提供すると決めたサービスが労力的(手間)にも実際的(時間)にも提供できなくなる可能性が非常に高い。

これまでのしくみをそのまま続ければ、そのサービスを必要とする多くの人にサービスを提供することができなくなってしまい、全員に提供するために手を抜いてしまうと、約束どおりのサービスが提供されなくなってしまう。
これまでは上手く機能してきたしくみが、状況の変化によって突然サービス提供の壁になってしまうことがある。

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このような場合に、コンセプトとトータルサービスを保ちながらサービスを提供し続けるには、しくみを変えなければならない。
しくみの変更で追いつかない場合は、基本サービスの変更を迫られてしまう。
多くの場合基本サービスの水準を下げて多くの人に利用してもらえるように工夫する。
ただ、この方法だとこれまでのお客の信用にヒビが入ってしまう可能性がある。

このような事態が起こらないように、あらかじめトータルサービスを正しく予測して、それに合ったしくみを作ることが大切になる。
発生前の対応と発生後の対応は、労力も、コストも、信用も大きな差となって表れる。
どうしても問題が起こってしまったら、なるべく初期の段階で早めにしくみを改善・変更して、状況に適応するように対策を考えた方がいい。

しくみの変更は基本サービスの変更よりもシンプルに行うことができる。
にもかかわらず、シンプルにできないということがよく起こってしまう。

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できるはずのものをシンプルに行うことができない理由の多くは「これまでこのやり方でうまくいってきたのに、今さら変えることはできない」「これまでうまくやってきたのだから、もう少し様子を見よう」などの保守的、消極的な考え方によるところが大きい。

しくみへのこだわりは、手順やルールを変えたくない個人的な気分の表れで、過去の成功事例にしがみつく人間心理である。
社会心理学でも一貫性の法則として証明されている。

しくみは最初から改善と更新を組み込む必要性があり、それをないがしろにすると、いずれしくみそのものがサービス提供の壁になる。

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となってしまう。
しくみを改善しなくなったとき、最終的にそのサービスはサービス提供を正しく行うことができないという意味で必ずダメになってしまう。

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03.しくみ作りの3つのルール

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もともとサービスは、コンセプトが生みの親になる。
ハードも基本サービスも、コンセプトによって作られる。

脇役であるしくみは、これらの主役とコンセプトを反映するものにする。
少なくとも、反対はしないようにする。
演劇を成功に導く、脇役の仕事は何かということを考えるようにする。

たとえばファーストフード店では、調理の方法、調理台の位置、調理前の材料の保管場所など全てが決まっている。
そして、現在提供できる現品がないときでも、オペレーションに従って数分の調理を行うことで提供することができるしくみが作られている。

それは「ファースト」フードというコンセプトを、トータルサービスによって提供する目的があるからで、提供するまでの調理・動線・手順も、その目的のために作られている。
これがしくみによってトータルサービスを構築するということである。

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サービスのしくみはトータルサービスを作り上げるためのもので、従業員が働きやすいように作られるものであってはいけない。
したがって、従業員の便利、快適などの「効率」を中心にしくみが作られるのではなく、サービスに必要な「効果」を中心にしくみを作るようにする。

サービスに必要な効果というのは、提供すると決めたものを確実に提供することと、その約束を守ることである。
ただし、効果をあげるために効率が必要なときは、その方法を優先していい。
私的な欲求を満たすためではなく、公的な、サービス提供の目的を満たすために作るという決まりを守るようにする。

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しくみは基本サービスをうまく提供するために作られるけれども、必ずしもお客に満足してもらうようにする必要はない。
感動してもらわなくてもいい。
ただ、不満に感じてもらうことは避けなくてはならない。

ディズニーランドのアトラクションは長時間並ぶことで有名だが、待ち時間の中にも楽しむ要素を取り入れていることはよく知られている。

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パナソニックのノートパソコンが故障してサービスセンターに電話をする。
そしてどうしても修理に出さなくては直らないとき、配送に関しては専属の業者が専用のパッケージを持って、お客の都合のいい時間に引き取りに来てくれるようになっている。
少なくとも、配送に関しては待っているだけでいいのでストレスが軽減される。

小さなしくみとしての工夫がつまりはしくみであり、サービスするときに感じるお客のストレスを軽減するか、削除するしくみ作りを前提にする。

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02.しくみの「改善」と「更新」

しくみにはハードや基本サービスにはない、改善され更新されるという特徴がある。

ハードは一度できあがってしまうと大幅に変更するのは難しい。
基本サービスは「これを提供する」と決めたら必ずそれを提供するのだから、基本的に改善や更新はしない。

けれども、しくみは基本サービスを提供するために何でも行う役割なので、ダメなものを捨て、より良くしていくことに力を入れていかなくてはならない。
サービスは正確に提供されているのに、オペレーションに不備があってサービス提供が遅れているのなら、オペレーションの不備を改善して早く提供できるようにする。
ルールが定まっていることで、逆にサービス提供の足かせになっていることがあれば、

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このように改善と更新が必要なオペレーションとルールは、マニュアルによって定められる。
ということはつまり、

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と考えた方がわかりやすいし、的確だといえる。

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どのような場合に、どのような手順で、改善と更新が組み込まれるかと決めることもしくみ作りには必要で、このこともマニュアルに書き残してルール化される。

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しくみが決まっていなければ、真面目に、正確にサービスを提供しようとする提供者ほど、売上げを圧迫することでしか解決できないことがある。

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たとえば、私はお気に入りのスエードの黒い靴を持っている。
銀座のある店舗の銘柄なのだが、形も履きやすさも私好みで、だからその靴はよく履く。
それだけにかかとの裏が磨り減るのが早く、年に一度は修理に出していた。
かかとの修理と新しい商品の取り付けは、このお店のルールとして3000円で行うというしくみ(サービス提供後のしくみ)があった。
私はそれを利用していた。

ところが3年目に入ったある日、スエードの一部分が破れてしまった。
靴下が見えるような構造にはなっていないものの、見てくれは悪いし、雨の日は濡れてしまう。
そこでいつもかかとを取り替えてもらっている銀座店に靴を持っていき、修理できるのかどうかということを聞いた。
しかし残念なことに、修理は不可能だということだった。

そこでこのお店では、サービスの信用を守るために私に新品の同じ靴を用意してくれた。
これはサービスを必ず提供すると約束している提供者の立場としては間違った行いではない。
むしろ非常に正しい。

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しかし私は新品の靴を改めて用意すると決まるまでの過程や、店員の説明のぎこちなさなどを併せて考えてみて、このようなケースへの対処はしくみ化されていないのだと感じた。

たとえば、「2年間は無料で保証しますが、それを超えた場合に、全く同じ靴をお買い求めいただく場合は定価の二割引でご購入いただく」というしくみはあっていいだろう。
なぜなら、かかと部分の交換など、想定される問題は有料で対応しているのだから、それを超える不具合が有料でもおかしくない。

しかしもっと大切なのことは、程度が軽ければ有料で具合がひどければ新品というのは、お客から見てもサービスが公平ではないということである。
もちろん新品を手に入れると気分はいいし、「これからもこの店で買おう」と思うかもしれない。
しかし考えられた完全なサービスとはいえない。

サービスを提供するという約束はきっちりと守られているものの、これでは何か問題が起こるたびに、提供者は利益を圧迫されてしまう。
利益が圧迫されると靴の新商品開発に影響があるかもしれないし、人件費を削減しなくてはならなくなるかもしれない。
そうすると、結局は正確にサービスが提供されなくなってしまう。

しくみによってサービスを形作るのは、お客のためであることはもちろん、サービス提供者のためでもあり、その結果としてサービスの継続提供するという約束を守るためでもある。

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改善とマニュアルの更新というと難しく聞こえるかもしれないけれども、わかりやすい考え方として「支払方法」がある。
たとえば、インターネットで商品を販売するのであれば、銀行振り込みだけを受け付けていた支払いの方法から、代引きを加えることでサービスを利用しやすくなるお客もいるだろう。
飲食店であれば現金払いに加えて、クレジットカードで支払うことができるようにする。

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そうすると、クレジットカードの支払いに関する書類の事務処理、財務処理などを新しく業務に反映しなくてはならなくなる。
その手順や方法もルール化してマニュアルを更新する。

この方法は既にサービス利用者となったお客の声に耳を傾けることと同じように、サービスを利用するには今一歩踏み出せない、利用者ではないお客の声にも耳を傾ける必要がある。
それぞれのお客が求めるポイントは違っていて、両方を改善の対象に入れなくてはならない。

ではたとえば両方の声が複数上がった場合に、そのどちらがより大切かというと、それを判断するために

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ようにする。
売上げを目的にすると利用者ではないお客の声に応えることになり、顧客満足を目的にすると利用者であるお客の声に応えることになってしまう。
基準がどうしても一方的になってしまうので、このような場合は原点に返って、なぜこのサービスを提供しているのかという意味を見出してくれるコンセプトを基準にした方がいい。

加える改善があれば、削除する改善もある。
削除する改善は、お客は「それは別に必要ないかな」となんとなく感じてはいるが、特に迷惑ではないのではっきりと気がつかないという特徴がある。
したがって、お客の声に耳を傾けても削除する改善はなかなか見つからない。

削除する改善は、仕事に注目することからはじめる。
仕事のプロセスを分解してあまり強い意味を持たない作業を止める。
手順は増える一方で収集がつかなくなることが多いので、定期的に作業を削除するためのミーティングを開いた方がいい。

削除には別の見方もある。
同じ質のクレームが発生するのは共通の原因がある可能性がある。
たとえば、ある会社では月会費を事業運営の維持費として支払ってもらっている。
これを最初、サービス利用料という名目にしたらクレームが出た。
具体的に何のサービスを提供されているのかという意味がお客に見えにくかった。
そしてそれを「維持費としていただいています」と説明するように改善すると、「確かにこの価格でどうやって維持されているのかと思っていました」という声に変わった。

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配送業で配送ミスがあったり、レストランでオーダーミスがあったり、何かミスがあるときは構造的にそのミスが起こるようにできている可能性がある。
ミスが起こる、イコール改善とマニュアルの更新を行う、という「しくみ」を作っておくことで、しくみの管理はうまく行うことができる。
そして一度改善したら、万が一同じ配送ミスやオーダーミスがあったときにどのように迅速に対応するのかも併せてしくみ化しておく。

この両方をしくみ化することで、大本の原因を解決し、万が一の場合にも備えることができるようになる。
さらにできれば、改善と更新はいつ、どのように行なわれるかというルールも決める。

でなくては、状況と問題対応が変わるたびにマニュアルが更新され、混乱してしまうだけになる。
そうなると現場では結局ケース・バイ・ケースになってしまうので、改善の方法と時期を決めることで長期的にサービス提供をスムーズにする。

しくみ作りは、サービス提供前・提供中・提供後の3つの流れに関わるトータルサービスと、改善・更新のルールを決めることが基本作業となる。

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01.トータルサービスというしくみの考え方

サービス全体をトータルサービスとして見てみると、時間軸で、基本サービス提供前、提供中(提供するとき)、提供後に分けて考えることができる。
お客は、店舗に足を踏み入れるなどして、その経験がはじまってから終わるまでを通じて、全体的にサービスを感じる。
基本サービスだけでサービスを体験することはほとんどない。

全体を通じて適切に提供されたか、されなかったかを感じて判断する。
もしくは提供途中で気分を害して、サービス利用がキャンセルされることもある。

ハードと基本サービスは、サービスコンセプトを100%反映することで形作られる。
しかし、しくみの段階になってはじめて、利用者の意向や受け取り方が課題として組み込まれるようになる。

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たとえば、スーパーのレジやファーストフードで、順番待ちを飛ばしてサービス利用することはできない。
お客は、待ち時間や待つ状態も含めて、サービスのプロセスをトータルで経験する。
このことが、サービス提供前と提供後のしくみ作りに大きく影響する。

サービスには、ファーストフード店のように接客に強く依存するものもあるし、公共の交通機関のようにハードの利用がイコールサービスという場合もある。
ファーストフードのように受け渡しを行った瞬間にサービスの提供が終わるものもあれば、電車利用のように目的地に到着するまでサービスを提供し続けるものもある。

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サービスが提供される方法やリードタイムの長さによって、それぞれのサービスに応じた確実なしくみを築く必要が出てくる。

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たとえばある会社の場合、英会話をはじめたいお客が申し込みをしてから、実際にスタートするまでに、自宅や職場の最寄り駅近くのカフェで無料体験レッスンを受けることができる。
講師とフィーリングが合わなければ変更することができる。
サービスを理解し、自分に合った学習法を絞るために、スタッフが対面で無料カウンセリングを行う。わからないことは何でも聞くことができる。

これがサービス提供前のしくみで、お客は不安を軽減できるし、サービスをより詳しく理解することができる。自分のスタイルと、会社のカラーが合っているかどうかを判断することができる。

ちなみに、この行為を営業だと考える人もいるかもしれない。
営業は売りたいものを売る行為であって、マーケティングではなく販売促進の考え方に近い。
この会社では、あくまでサービス提供前のしくみとして、お客に役立つことだけを正直に話す。
そして契約を望む人だけに契約方法や申し込み手順などを説明している。

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サービス提供後のしくみもある。
英会話をスタートさせて、時期や期間を空けて最初の3ヶ月に3回のメールを送り、レッスン状況や、講師との相性、悩みや不安などがないかを確認する。
レッスンや講師に問題があれば、講師と相談をするか、お客にアドバイスをする。
相性が悪ければ講師を替え、悩みや不安などがあればその声によく耳を傾けて対応する。

他にも社長がしくみを作り、管理していた初期には、半年以上続けている生徒全員に「生徒による講師の評価」をしてもらい、講師が自覚していない問題を改善するようなこともしくみ化した。

また別の方法では、一人担当者を設けて、生徒全員に電話フォローを行い、メールでは億劫だし言うほどのことではないが、電話ならなんとなく話すことができるという声に耳を傾けるようにしくみを作った。

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これらがサービス提供後のしくみで、こういったしくみを含めた全体のサービス像をお客は感じ、良いのか悪いのか、自分に合っているのかどうかなどを判断する。

このサービス提供前、提供後のしくみに対して、サービス提供中のしくみ作りもある。
それはルールであることが多い。

この会社では基本サービスは講師が提供する。
カフェでプライベートレッスンを行う場合、たとえばドリンク代は、講師も生徒も自分のものは自分で支払う。
テキストは何を使うのか、それとも使わないのかの目安を定め、それを講師に伝え、生徒がレッスンをスタートする前にテキストを買うのか、それともとりあえず英字新聞など身近なものを使うのか、あるいは全く使わないのかなどということを決める。

基本サービスそのものの質を守るためのしくみもある。

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この会社では英語のネイティブを講師として採用しており、採用までに主に三つの面接を行う。
第一に送ってもらった履歴書の内容はもちろん、書式、単語ミス、文法ミスなどがないかをチェックしふるいにかける。書類に問題がなければ電話をし、発音、言葉使いなどに耳を傾け、さらに必要な情報をその場で得る。
最後に対面の面接を行い、服装や態度などを観察する。

経歴や講師の経験はもちろん必須であるが、人間性の何をチェックするかということまで細かく決まっている。
さらに、今までに講師経験がないか、少ない人に向けて、教え方や文法説明などの講座を開催する。
この講座に参加することで、講師はレッスンの的確なポイントを理解できると同時に、生徒が何を望み、何に不安を抱えているのかということをよりよく知ることができる。
また、理由なく講座に参加しない講師未経験者には、極力生徒を紹介しないこともある。

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サービス提供前、提供中、提供後のいずれの場合も、基本サービスを中心としてトータルサービスが作られていることがわかると思う。
サービス提供前・提供中・提供後の3つのプロセス全てを通じて、

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が、しくみを作ることであり、トータルサービスの考え方である。

この考え方とは違って、無料のアフターフォローを用意することで「サービスを良くしている」と考えるのはまちがっている。
無料のアフターフォローをだけを取り上げて、それをサービスとはいわない。
あくまでトータルサービスを形作る、しくみの一部でしかない。

また、このアフターフォローがとても緻密で親切に感じるからといって、そのことでサービスが良いともいえないし、不快に感じたからといってサービスが悪いともいえない。
ここでいえることは、提供すると約束したサービスを正しく提供することができていれば、それは正しいサービスであり、提供できなければ正しくないサービスだということだけである。

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