02.サービスが確実に提供される前提

全てのルールは「サービスを提供するため」に存在する。
マニュアルも同様である。
画一的に行う目的で、行動を強制するために存在するのではない。
利用者に満足を与えるためでもない。
接客者の便利のためでもない。
物事が正しく履行されるために存在する。

よってまず、画一的に行うため、利用者の満足のため、接客者の便利のため、に作られている部分を見直し、改善するか、削除する。

改善とは、サービスを正しく提供するという部分に焦点を合わせ、再構築するということである。
サービスは確実な提供が最も基本的な信頼になる。
提供の確実性を問題とし、その他の要因を問題にしてはならない。

以下の4つのポイントは、その中でも特にサービス機能に影響を与える可能性が高い。よって優先して見直しを行う。

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サービス提供には、適切な時間の感覚値という考え方がある。
これは多くのサービスの基本である。

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それぞれのサービスには、それぞれの適切な時間の感覚値がある。
レストランで注文を受けて注文通りの料理を提供する場合でも、1時間も待たせるようでは正しくサービスを提供したとはいえない。
お客も正しいとは思わない。

ホテルのチェックアウトタイムが午前6時であってはならない。
誰もそのホテルのサービスが正しいと認めない。

宅急便が1週間後に届くことも、やはり正しいサービスだとはいえない。
公共の交通機関が十分遅れてしまうと社会機能に弊害が生じる。

それぞれのサービスには、それぞれ提供されるのに適切なリードタイムがある。
それは誰も何分であるかを説明できないが、感覚的に適切な時間を理解している。
各サービスで適切な時間の感覚値を保ち、サービス提供者は時間の感覚値を秒単位まで測り、理論化し、正確に理解する必要がある。
マニュアルに落とし込み、サービス提供に時間差が出ないように統一する。
混雑時には混雑時の時間の感覚値を設定し、時間を守るように努める。

実際に、公共の交通機関、ファーストフードなど、サービスの形がしっかりとでき上がっているサービスでは、時間の感覚値を実務に反映している。
ディズニーランドのアトラクションでは、行列の位置によって、現在地があと何分待ちであるのかを記している。

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時間の感覚値ミスは、利用者にサービス利用を断念させる原因になる。
特に提供の遅れについてはあらかじめ入念に計画しておく。
サービスがうまく機能しなくなる直接的な原因が、時間の感覚値の不備にあることは少なくない。

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利用者は、サービスを利用する前に情報を集める。
その情報は提供者の公の約束で、実際に提供されるサービスと差があるときにその差を見直す。
約束がどのように交わされ、実行され、不備が生じた場合にどのように正すかの誤差を改善する。

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サービス利用前の情報は、サービスによってではなく、マーケティングによって作られる。
ネット、口コミ、営業マンのプレゼンテーション、マスメディア、広告などがある。
この中で、サービス提供者が直接情報発信する営業、広告、ホームページ、パンフレット、チラシなどの媒体で、情報を発信する際にサービスを低く見積もったり、高く見積もったりしているものを改善する。

低く見積もるというのは、実際にサービスを利用した後により大きく喜んでもらう心理効果を狙った約束のことで、高く見積もるとは、購買を促すために実際のサービスよりも良く見せるということである。
どちらの場合も、約束に反したサービスを提供することになる。

前者の場合は、次回以降の利用者の期待値が高まるため、利用者はいずれサービスに失望しサービスを提供する接客者はそのプレッシャーに応え続けなくてはならなくなる。

後者の場合は即クレームにつながる。
クレーム対応に追われ、適切なサービスを提供する時間がなくなることで悪循環に陥る。
いずれの場合も長い目で見たとき、サービスが上手く機能しなくなる。

また、実際にサービスを提供しているその瞬間に約束を交わすことがある。
現場で交わされる約束である。
洋服の仕立てでは、寸法、縫製方法、期日などを基本サービスとして約束する。
これらの約束も守られなくてはならない。
レストランでのオーダー、新幹線の座席指定、電化製品の配送日なども同様である。

現在サービスがうまく機能していなければ、時間の感覚値と共に、約束が守られているかどうかを最初に見直す必要がある。

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一般的には、在庫管理は事務作業であり、サービスの役割ではないと考えられている。
また商売では、在庫の調整によって購買心理を刺激することもある。
人気商品をわざと小出しにしたり、在庫を処分し、販売を促進するためにパッケージ販売をしたりする場合がある。

経営では、財務上在庫をなるべく抱えないよう調整することもある。
在庫を抱えないことで手元のキャッシュを確保する場合や、財務諸表を中心とする経営状態の悪化を防ぐため、端的に言えば赤字を計上しないために在庫調整が行われる。

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しかし、サービスでは「時間の感覚値」と「約束を守る」という基本作業が確立していれば、それに即した在庫管理を行う。
つまり、サービス提供を必要としている利用者に滞りなく提供することができるように在庫を調整する。
在庫不足によって提供することができない状態――「申し訳ございません。ただいま切らしております」――を防ぎ、時間の感覚値を守り、提供すると決めた約束を守る。
これによってサービスの信頼が保たれる。

在庫が不足したときに生じる問題は、提供の遅れであり、提供の遅れとはつまり時間の感覚値ミスである。
サービスにとって在庫とは、信頼を保つための手段である。

八百屋に野菜がない状態は適切ではない。限定100台の格安PCを提供すると約束した場合、在庫が80台であってはならない。80台は即日、20台は1ヵ月後に提供してもならない。
サービス提供上必要とされる在庫管理の不備を見直し、しくみによって定め、正しく提供できる状態を作る。マニュアルが不完全であれば、改善し統一する。

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価格設定は、マーケティングの仕事であると考えられている。
実際にその通りである。

しかし、サービスの観点でも正しい価格付けを行う。
その方法は、コストや販売量、利益率などから設定されるものではなく、提供するサービスの価値に対して、その価値を反映する価格の対価が適切であるか、との視点から検討する。

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実際の価値よりも低く価格が設定されている場合、利用者は価格によって価値を低く見積もる。
利用者の効用全体が低く見積もられる。
この状態で提供者が正しくサービスを提供しても、サービスのもたらす実際の価値に対して、効用が低めの利用者が集まることになる。
利用者の「価値が低いものは効用が薄いのではないか」「いつでも手に入れることができる」という心理作用が働く。
この結果、コンセプトに沿った基本サービスが正しく提供されていても、利用者の絶対値としての効用が合致しなくなる。
サービスが上手く機能しなくなりはじめる。

実際の価値よりも高く価格が設定されると、そのサービスを必要とする人が利用を止めることがある。
利用者は実際の価格以下の価値を提供されたと感じ、効用が満たされないと判断する。
これがサービスの継続利用を断念させる。
結果的に利用者の信頼を裏切り、サービスが機能しなくなるケースである。

価格はほとんどの場合、市場との相対価値と利益計算によって客体的に決まるが、サービスでの価格設定は主体的に検討する。
主体的に検討された適切な価値を反映する価格は、コスティングを行うマーケティング担当に提出し、価格に対して検討を促すようにする。

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マーケティングの担当者によって、現在の価格を基準にサービスの価値を落としたり引き上げたりすることを要求される場合がある。
このような提案を受けてはならない。
価格はサービスの価値によって決まるものであり、その逆ではない。
商売上の収益性に問題がある場合は、コスティングや販売手法をまず見直さなくてはならない。
サービスでコスティングを見直すときは、結果としての効果を維持したまま(または促進して)、効率を上げることで経費削減に貢献できる方法を採用する。



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