04.サービスの提供を断る作業

サービスの提供を断るべきであるのに、断らないことによってサービスが上手く機能しなくなることがある。

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しくみの設定や改善で、提供しないサービスが何であるかが明確に定まったら、これを実行しなくてはならない。
コンセプトに沿っていても(沿っているからこそ)提供しないと決めたサービスは「提供しない」とサービス利用者に伝える必要がある。
大々的に公開して伝えるか、問い合わせがあった場合にのみ伝えるかは、提供するサービスの内容によって変わる。

いずれの場合であっても、サービス提供を断る作業を行うことができるのは、これまでに見てきた接客の3つのプロセス(正しくサービスを提供することができ、問題に機会対応でき、サービスの枠を正しく超えること)ができる熟練者が行う。
このレベルの熟練者でなくては、サービスが提供されないことにお客は納得できず、納得できないために全てのサービス利用を止める可能性がある。

提供しないサービスを提供しないと伝えるとき、熟練者は提供するサービスを守る目的と共に、その提供しないサービスがお客の効用と一致するかどうかを考えるようにする。
お客が望んでいる(提供しない)サービスがお客の得たい結果と一致しない場合は、お客の希望が間違っていることを伝え、通常のサービスを利用してもらうことを勧めなくてはならない。
逆に、(提供しない)サービスとお客の効用が一致している場合は、サービス提供できないことを伝えた上で、そのお客が効用の一致するサービスをどのようにして手に入れることができるかという情報を提供する必要がある。

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提供された情報は、次に同じケースがあった場合に備えてしくみに反映する。
また、効用が一致しないお客が問い合わせをしてきたり足を運んできたりするということは、集客手段に問題がある可能性がある。
セールス部門、マーケティング部門に対して、確保するべきマーケットの微妙なブレを修正してもらうよう働きかけを行う。
そうしなくては、接客は効用の一致しないお客の対応に追われ、基本サービスの提供がおろそかになることでサービスが上手く機能しなくなってしまう。

サービスの基本は提供すると決めたものを提供することにある。
しかし現場では、提供すると決めてはいないが、提供しないとも決めていないものの提供を求められることがある。
この場合は、現場の判断によって提供する場合としない場合を決める。

提供するのは、サービスの枠を超えて提供していい条件に当てはまる場合である。
つまり、基本サービス提供の不備を取り戻すとき、初めてサービスを受ける人に対応する場合、特別利用者に対してサービスを提供する場合の3つのケースがある。

それ以外の場合は、サービス提供を断る。
少なくとも保留にする。
提供できるとしても、基本サービスに及ぼす影響が読めないからである。

この場合も、利用者がどのようにすれば必要とするサービスを手に入れることができるか、情報提供で協力する。
サービスを提供できないことでわざわざ気分を害してはならないが、気分を害さないことが目的になってもならない。
対策はしくみに頼り、接客任せになってはならない。

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たとえば高級ホテルの中には、満室の日にお客が訪れた場合、他のホテルの予約を行い、タクシー代を支払うという対応を行うところがある。
これは何もフロントの接客が良いのではない。
ホテルとしてのしくみがしっかりしているのである。
宿泊という基本サービスを提供することができない場合に、サービス提供を断りながら、利用者の効用を満たす情報を提供する方法である。



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