01.コンセプト反映の手抜き対策

ブランドが弱まったり崩れたりすると、サービスは上手く機能しなくなる。
かつて理解が一致していたものが、現在はお客の疑問によって崩れている場合、速やかにブランドを維持し継続する手を打つ必要がある。
対策としては4つある。

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これまで提供者と利用者の間で理解が一致していたものが、突然不一致に変化するとき、その原因はほぼ100%サービス提供者側にある。
そして、その大部分がこの「コンセプト反映の手抜き」に原因がある。

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コンセプトの反映不備は、サービス展開時の、ハードと基本サービスに対してよく起こる。
または基本サービス提供に関わる接客に対して起こる。

ハードへの反映不備は多店舗展開を行う場合、つまり規模を広げる量の展開のときによく起こる。
立地が考えられ、内装はカラーから小物まで統一したとしても、場の持つ雰囲気や空気がどうしても一致しないことがある。
ハードが土地の文化になじまない場合もある。

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内装の基調となるカラーや使用する家具などが統一されていても、入り口から見渡す角度や、光の量、窓の大きさと数、景色の差などでハードが維持されないことがある。
このような微妙な誤差はサービスに影響を与えはするが、対策も意外に簡単に行うことができる。
ハードの設計は、微妙な誤差によって左右されないようにあらかじめ計画するか、左右されてもブランドに響かないように構築すれば問題は生じない。

たとえば、アジア料理、日本食、イタリアンなどを展開するグローバルダイニングでは、各店舗のハード、特に内装は床から天井まですべて統一されている。
基本的に光や窓の大きさに左右されない内装、つまり完全な隔離空間としてのハードを作っている。
屋外で飲食が可能な店舗や、レインボーブリッジを見渡せる窓のある店舗もあるけども、ほとんどの席は隔絶された空間によって、外界から完全にシャットアウトされることで統一感と雰囲気を保っている。

これとは別に、予算の問題や施工業者の変更などでこれまでよりも劣るハードを作ってしまうケースや、マーケットの問題などでこれまでよりも小さな(あるいは大きな)店舗展開を行うことでブランドが崩れることがある。

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予算や施工業者の問題は、サービス提供者の明らかな不備だといえる。
問題がはっきりしているだけに、対策も単純で難しくない。
これまでのブランドを維持できない状態での展開を行わないようにする。
既に展開してしまっているのなら、撤退するか予算を次いでハードの改善を行う。
撤退の方がブランド維持に速効性がある。
ブランドの崩壊の度合いが低いか、持ちこたえられる範囲であればハードの改善によって対応することも可能になる。

ハードの規模によってブランドが崩れるのは、サービス提供者のブランド認識が甘い証拠である。
より正確に表現すると、

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ことの表れに他ならない。

ブランドはコンセプトを正しく反映するだけでは維持されない。
コンセプトの反映が、お客の理解と一致しなくてはならない。

お客にはサービスに対してイメージする、規模の下限と上限がある。
たとえば、味にこだわりのある行列のできるラーメン店が、大学の学食のように広い大型店舗を展開するとブランドが維持されなくなる。
内装が同じでも、規模が大きすぎることでブランドの信頼性が保たれなくなってしまう。

展開を行うとき、コンセプトはブランドに沿って完璧に反映される必要がある。
事業をはじめたときや、小規模のときのように、ただハードにこだわりを落とし込むだけでは、もはやブランドは維持されず、サービスが機能しなくなる危険性がある。

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ハードの場合と同じように、味にこだわりのあるラーメン店が多店舗展開を行う場合、味が同じではないという評判を耳にすることがある。

1号店は行列ができているのに、2号店は空席が目立つということが実際に起こり得る。
ハードが完璧なら、原因は基本サービスにある。

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たとえば、ラーメンの味の大半はスープで決まる。
スープの味を本店と同じように保つためには、同じ素材を使い、同じ調理方法を行い、天気によって変化させる方法も同じでなくてはならない。
そしてその方法は、それを行う料理人の修行によって感覚で習得すると共に、しくみ化されている必要がある。
しくみ化されず、されてもマニュアルを嫌うサービスでは統一したサービスの提供が難しいために、サービスが破綻する。

しかしこれよりもはるかに重要なことがある。
実は味(基本サービス)が同じであるかどうかは利用者にとって重要ではないということである。
素材も調理手順も完全に同じで、最終的な味が完璧に統一されていたとしても、利用者がなんとなく「統一されていない」と感じるのであればブランドの低下に直接結びつく。
提供者がいくら「同じ」を主張しても、そして実際に同じであっても、この流れを止めることはできない。
ハードが統一されているのであれば、その原因は基本サービスを提供する接客にある。

基本サービスであるラーメンとその味が同じであるのに、お客理解が一致しないのは、接客者の態度、人数、手際、ベテランと新人の割合比率、しくみを遵守しているか、いないかなどに左右される。

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1号店では元気な店員が多く、2号店ではクールな店員が多ければ、お客は同じサービスを受けている気分にならない。
そして1号店と2号店のどちらのサービスを支持するかというと、1号店を支持することになる。
1号店の接客を支持するのではなく、サービスを支持する。

なぜなら、1号店のブランドがあるからこそ2号店のサービスを受けようと考えるのであって、その逆ではないからである。
接客ではなくサービスを支持するというのは、お客にとって接客は感覚で、どちらの店で同じ強さの満足があると、その原因を基本サービスにあると考えるからである。

ブランドはまず、ハードと接客者から得られる感覚的な情報によって作られる。
ハードが同じで、接客に違いがありながら不快感はないとき、お客は不整合の理由を基本サービスに求める。

衣服やカバンを扱うサービスなど、基本サービスとなる商品が明らかに同じでもでも、種類が少ない(実際に少なくなくても)、ラインナップがバラバラ(実際にそうでなくても)ということに、質の低下の理由を見つけようとする。
つまり、

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よってラーメン店の場合では、「味が落ちた」という評価されるようになる。

ただし実際に接客の質が劣る場合は、お客はその原因を正しく接客に見出す。
こうしてブランドが崩れはじめるが、それというのも、もともとの原因はサービス提供者のトータルサービスに対するコンセプト反映の不備による。
ハードの場合と同じく、ブランド理解を組み込んでコンセプトを反映することで、このような事態は避けることができる。



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