サービスを作り上げることができたら、次はそのサービスを維持することが課題となる。
維持といってもそれは現状維持という意味ではなく、実活動の中で強いサービスをさらに強くするための方法を維持する。
そのために行うことは2つあって、ブランド作りとサービス展開が一体になって行う。
2つの頭を持つ強い鷲が未来に羽ばたくようにサービスを維持する。
ブランドはマーケティングや広告によって作られると広く信じられているが、これは実はかなり大きく間違っている。
マーケティングの教科書を開けば、ブランドは他(のサービスや商品)との違いを認知させるものであるとしている。
たとえば、同じ香水でも銘柄が記載されていないものと、クリスチャン・ディオールと書かれているもので、購入されるかどうかが決まるなどと説明する。
そして認識のために、ロゴ、ネーミング、パッケージ、広告、イメージカラーなどをよく考えて、オリジナルの特性を伝えることがブランドだとしている。
この考え方はもちろん間違いではないし、元々ブランドは牛の焼印によって所有者を見分けるところからはじまっているので、お客に認識してもらうということはとても大切である。
けれどもマーケティングによって作られるこのブランドは、どちらかというとブランドイメージに近いように思う。
イメージというのは頭の中で想像されるもので、実際の物事ではない。
ロゴやネーミング、広告などで作られるのは「あの香水はクリスチャン・ディオールの香水だ」という認識で、その次に「だからきっと高いに違いない」とか「商品に間違いはないだろう」とか、「ディオールならスタイリッシュでカッコイイ」などとこれまでに知っている知識に照らし合わせて想像する。
しかし、そのイメージが本当にブランドに合っているのか、実は誤認や間違いがあるのかはわからない。
けれどもマーケティングは、このイメージをより正確にわかりやすく、強く訴えかけるために工夫し、お客の元へ届ける。マーケティングは100%お客主導なので、彼らに正しく認識してもらい、理解してもらうために色々とアイディアを絞り、工夫する。
では、お客に正しく認識してもらい、理解してもらうことというのは一体何だろう?
それが、実はサービスコンセプトなのである。
マーケティングが、もし「私たちのサービスは○○ですよ」と伝えたのであれば、それはただの宣伝広告にすぎない。
「この商品を必要とする人やぴったりの人に向けて、私たちはちゃんと用意をしていますよ」ということを伝えているだけになる。
しかし同じ広告であっても、「私たちはこう考えてサービスを提供しているんですよ」ということを伝えているのであれば、それはサービスコンセプトを伝えていることになる。
「他にも同じ商品は売られていますが、私たちの考え方は○○なので、これを商品として扱っています」ということはコンセプトを伝えている。
よくテレビで見かける再春館製薬のドモホルンリンクルのコマーシャルは、化粧品であること以外の商品説明を一切行わない。
化粧品を作るプロセスや、どのように考えて作っているか、工場はどのような雰囲気なのかということをナレーションや映像で説明している。
これがサービスコンセプトを伝えるということである。
そしてお客の頭の中に、サービスの背景にある考え方やこだわりがイメージされる。
これがブランドイメージである。この段階ではまだブランドということにはならない。
考えてみてほしいことは、ブランドはそのサービスを利用したことのないお客によって作られるのかということで、そんなことはもちろんあり得ない。
でなければ、イメージさえ広げてしまえば、強いブランドはいくらでもできてしまうことになってしまう。
ブランドはサービスによって作られる。
お客は実際にサービスを受けて、いろいろなことを感じる。
その体験の中で利用したサービスについてより深く正確に知り(または感じ)理解したことと、サービスコンセプトの一致したところが、ブランドになる。
このブランドをマーケティングは、人びとに向かって2つの方法で伝える。
ひとつは、コンセプトだけを伝えることで、お客に
そしてあとはお客がサービスを利用しさえすれば、コンセプトは既に知っているのだから自動的にブランドが生まれる、という方法。
たとえば再春館製薬のテレビコマーシャルのようなパターンがある。
あるいはオムツや歯ブラシのような、これといった特徴のない商品にもよく使われる。
もうひとつは、
「私たちのコンセプトとお客の理解にはこういうことがありますよ」などと
既にサービスを利用したお客の声を伝えることや、そのサービスの歴史(つまりこれまでのお客理解の蓄積)を伝えること、あるいは皇室御用達など、お客の側の理解に信頼があることを伝える、などという方法がある。
マーケティングがどのようにブランドを伝えるとしても、その根底には必ずサービスによって作られるブランドがある。
私たちは、ディズニーランド、メルセデス・ベンツ、東京大学などのブランドイメージをかなり正確に知っている。
ディズニーランドは行ったことがある人も多いだろうから、少なからずブランドそのものを理解しているだろう。
逆に東京大学で学んだことのある人は少ないから、私たちは学んだことのある人たちのことを見たり、聞いたりしてブランドイメージを持つ。
そのブランドイメージはほとんど本物のブランドに近い。
こうやって作られるブランドの本質的なことは、宣伝の上手さにあるのではなく、どのようなサービスを提供しているのかというところにある。
ということがわかる。
そしてブランドが完成するためには、第一にコンセプトに適ったサービス提供の約束が守られていることと、第二に利用者がそれを正しく理解していることの、両方の条件が満たされなくてはならない。
コンセプトが忠実に反映されたサービスを提供だけをしていてもブランドは作られないし、お客がコンセプト以外のことを理解してもやはりブランドは作られない。
ただし、利用者の理解というのはおおむね
であって、理論的な理解ではないから、ブランドを作るときは感覚で伝わるように工夫する必要が出てくる。
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