04.継続提供・問題点の対処

サービス提供を完璧に実行するしくみでありながら、サービスが上手く機能しないことがある。
初回のサービス提供に対してしくみは完全であるのに、サービスの継続提供に対してその同じしくみが不備になることがある。
このような不備を見直し、改善する。

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たとえば、初回の人がサービスを受ける場合に割引などで優遇され、利用回数を重ねるごとに冷遇されるようなしくみは、サービス提供の継続を断念させることにつながる。
確実に提供するべきサービスを提供しているのにもかかわらず、利用者は継続提供を止めることになる。

またはしくみ上、初回の利用者に対して完璧な対応方法が定められていたとしても、利用回数を重ねるごとにその対応が不備になることもある。
特に高級サービスの提供や、提供プロセスの煩雑なサービスで起こり得る。
利用回数の多い利用者に対して、カバーするしくみを作る必要が出てくる。

高級サービスでは、何度そのサービスを利用しても利用者の好みをしくみとして把握しない場合、利用者は高級サービスを味わうメリットを感じなくなる。
このようなケースに対して、しくみとしてデータベースによって回数を重ねる利用者の特性をストックする場合もあれば、カード会社のようにゴールドカード、プラチナカードなど目に見える差を提供する場合もある。
いずれにせよ、利用者をサービス利用の重要度によって層を分ける

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が必要になる。
このセグメントによって継続利用を促すことがでる。
少なくとも、利用を止めることに歯止めをかける手助けとなる。

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提供プロセスの煩雑なサービスというのは、たとえばコンタクトレンズの提供など、視力、眼球のカーブ、傷の具合のチェック、ハード・ソフトなど商品の選択など個別対応が必要な上に、眼科検診など提供までのプロセスが煩雑なサービスを指す。
この場合、コンタクトレンズの提供が基本サービスになるが、基本サービスが完結するまでのサービス提供前段階のプロセスに時間と手間がかかる。
特に初回の利用者は全てのプロセスを経なくてはならない。
この、初回のプロセスとほぼ同じ(煩雑な)プロセスを、2回目以降も繰り返す必要がある場合、利用者はサービス利用を止めてしまうことがある。
通常、カルテによって利用者データを蓄積することで、複数回必要とされないプロセスを省略する。

ホテルのレセプションでも同じことが起こる。
何度も継続利用しているにもかかわらず、チェックインの際に氏名、住所、電話番号の記入を求め、クレジットカードの提示を促し、部屋に関する同じ説明を行うことは、継続利用の停止につながる。
利用者は特に基本サービスに不満を感じていない場合にも、あるいはサービスに効用が一致している場合でさえ、このようなプロセスの煩雑さにサービス利用を停止してしまうことがある。

継続提供に対するしくみの不備をこのような観点から見直し、サービスを継続利用するときに便利なしくみを取り入れ、改善することでサービスを上手く機能させる。

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これとは別に、サービスの継続提供を促進させるしくみも構築することができる。
たとえば、駐車場の設置はトータルサービスを継続提供するのに役に立つ。
駐車場利用のルールも取り決めされる。
都会の大型スーパーの駐車場では「2000円以上購入すれば、3時間無料」などと決められる。
駐車場はハードだが、駐車場のルールはしくみとして決まる。
またはコンセプトに適っていれば、買い物中に洗車を提供することがあるかもしれない。
これもサービスのしくみである。
しくみの中でも、そのサービスを必要とする人に継続提供の手助けを行うしくみである。
ポイントカードや懸賞景品、イベント、バーゲンセール、会員招待のパーティーなども同じように、サービスの継続提供を促すしくみである。

サービス提供継続を促進するしくみを作る場合のルールが1つある。

それはサービスの構築同様、ハードから順番に行うことである。
(ただし基本サービスは決まったものを提供することであるので、この場合は必要なく、ハード、しくみ、接客の順で行う)
効果も通常はハードが最も高く、しくみ、接客と徐々に落ちる傾向にある。
駐車場はハードに当たる。
懸賞景品はしくみで、会員パーティーは接客の要素を多く含む。

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駐車場が最も効果が高く、会員パーティーが最も手間と人手がかかる。

サービスが上手く機能しない場合、積極的に継続利用を促すしくみがこの順番で提供され、重視され、ルールを守っているかどうかも検証する。
ルールが守られていない場合は、ハード、しくみ、接客の順で構築内容を見直し、提供の手順を変更する。

このようなしくみを設けても、そのしくみが接客に頼るばかりでは手間の割に効果が反映されない。
むしろ基本サービスの提供をないがしろにしてしまう可能性すらある。
それでは継続利用を促すどころかサービスの足を引っ張ることになってしまう。
このようなしくみの提供は直ちに停止しなくてはならない。

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サービス上の問題とは何のことを指すのか。
それは、トータルサービスの提供を阻む要因のことを指す。
その最大の阻害要因は、サービス提供に使われる

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であって、その中でもクレームは最も考えられなくてはならない問題である。

クレームを「問題」だというと、抵抗を示す人も多い。
クレーム自体は問題ではない。
クレームがサービス提供の状態を阻む状況を作ること、サービス提供に使われる時間を阻むことが問題なのである。

しくみの改善を考える場合、クレームは「問題」として認知し「対処」の方法を検討する。
サービス提供を滞りなく行うための処理方法とルールの構築を考える。
しくみはトータルサービスの構築を目的にクレーム対処を改善する。

一方で、接客におけるクレームの考え方はこれとは異なる。
接客ではクレームを「機会」として捉え「対応」としてこれに当たる。
対処ではない。
接客でクレームを問題視する場合は、全体的なサービス提供阻害の問題と同時に、利用者個別の、サービス利用の問題として考える。

ある特定の人によるクレームは、全体のサービス提供に支障をきたす。
少なくとも時間的に支障をきたし、サービスを必要としている他の利用者にサービスを提供できなくする可能性を持つ。

だからしくみの改善によるクレーム対処は、サービス提供を滞りなく行える状態に戻すことと、時間の回復を前提に行う。

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カスタマーサポートの部署を作ること、直接接客(店舗など)で別室に移ってもらうことで問題に当たることは同じ意味がある。
トータルサービスの提供上必要な、サービスの流れをせき止めないために、別件としてそのケースに当たるしくみを持っているということになる。
時間の回復のために別件対処するというのは、もっとも基本的なクレーム対処のしくみだといえる。

しくみを見直す場合は、時間の回復と通常のサービス提供の流れを取り戻す

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の方法を軸にする。
現在のマニュアルがトークスキルや謝罪の手紙を送る取り決めなどを基準とした「問題回避」を軸に作られているのであれば、時間の回復とサービス提供の流れを取り戻す視点から再構築を行う。

ただし、時間を回復することでサービス提供の流れを取り戻す具体的な方法は、各サービス事業者によって異なる。
その方法はコンセプトに適っている方法で行う。
対処方法がコンセプトによって異なるということは、他のサービスの対処方法を取り入れることはできないということである。
クレーム対応本などに記載されている方法を取り入れても、問題は解決されないということである。

受け入れやすい、受け入れにくいは別として、「どのような場合にも全品キャッシュバックする」というようなしくみを持つアメリカのデパートチェーン店もある。
コンセプトに沿っていて、その方法を継続することができ、かつ時間とサービス提供を取り戻すことができるのであれば、このようなしくみを作っても構わない。

また、サービス提供そのものを断るというしくみも作る。
提供するサービスと利用者の効用が合わない場合、サービス提供を断ることで、サービスを本当に必要とする人に滞りなくサービスを提供するしくみを作っておく。

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NOを言わないことで有名な高級ホテルも、実は価格によってサービス提供を断っている。
たとえば1泊5万円の宿泊費を支払うことができない人を利用者として想定していない。

目に見える明らかなしくみにするか、目に見えにくいそれとないしくみにするかはブランドによって異なる。
いずれの場合にしても、サービス提供を行わないケースを想定して、時間とサービス提供の流れを回復する方法を盛り込む。

現在のしくみが上手く機能しない場合は、それがなぜ機能しないのかを分析し、改善する。
しくみの改善でやってはいけないことは、クレームを発信する人の感情の状態を回復するしくみを作ることである。
それは接客が行う。
しくみは、時間の回復とサービス提供の流れを取り戻すためにやるべきことを定める。
お客の感情に付き合うしくみを作ってはならない。

クレームとは別に、検討するべき大きな問題がもう1つある。
基本サービスの提供時に、提供行為に不備が出る場合のことである。
たとえばレストランで注文の品をテーブルに運ぶときに、バランスを崩して料理を落としてしまうなどのことである。
このような場合、第一にその

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方法をしくみ化する。
第二にその

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ための方法をしくみ化する。

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状態回復の方法はシンプルである。
基本は再提供にある。
ただし、サービス提供にあたっての時間の感覚値は必ず遅れているので、それを回復するためのしくみを構築しなくてはならない。
よく行われるのはオマケや割引券をつけることだが、必ずしもそうでなくて構わない。
接客によって、親身に接するなどのフレキシブルさがあってもいい。
ただしその場合もしくみとしてルール化する。
そしてなるべくコンセプトを反映する方法を検討する。

さらに、オペレーションの優先順位をどのように変更するのかについてもしくみとして定める。
提供に不備があった場合は、その利用者への再提供を優先することはもちろんだが、それによって二次的、三次的なサービスの不備、提供の遅れなどが生じないように組み立てる。

発生率を下げるためには、「提供」に焦点を当ててプロセスを再検証する。
全体の流れをフローとして捉え、改善ポイントがあるかどうかを調べ、あれば変更する。
次に仕事を(しくみも接客も)時系列で分解して、それぞれのプロセスに無駄や不備がないかを個別に検証する。
部分的にミスがある場合はこのプロセスを改善する。
この検証では利用者に親切に接する方法などは省く。滞りなく提供するということに絞ってプロセスの改善を行う。



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