コンセプトを反映するために提供するべきものを決め、一度決めたら提供することを約束し、確実にそれを行う。
たとえば人の命を救う医者は、そのコンセプトを反映するために、外科手術や癌の放射線治療を行うだろうし、弁護士は人が法と法律に則って健全な生活を助けるための弁護と法的作業を行う。
それは裁判で被告の無実を晴らすこともあれば、内容証明を作成するなどの事務作業の場合もある。
どのサービスでも、コンセプトを反映するためにサービスが存在していて、もしハードがなければこれらのサービスをそもそも提供することができなくなってしまう。
どんなに腕がいい外科医でも、手術室と道具がなければ患者の命を救うことはでないし、癌の専門医はレントゲンや放射線機具がなければ治療することができない。
弁護士は裁判所がなければ被告人の無実を晴らすことができず、紙とペンと印鑑がなければ内容証明一通作ることすらできない。
証券や金融のように目に見えないものを扱うサービスでも、オフィスや店舗を必要とする。
飲食店、ホテル、美容室、タクシー会社などはサービスのハード比重が高く、ハードが直接サービスを提供していることがわかる。
基本コンセプトを反映したハードというのは、サービスを反映するために必要な
のハードのことを指す。
「最低限」というのは、
という状態を解決することをいう。
サービス提供者は、この最低限のハード構築は行わざるを得ない。
ところが基本コンセプトを反映するだけでは、全体的なサービスとして面白みに欠けてしまう。
もちろん、業界には業界の雰囲気があるので、基本コンセプトをハードに反映するときは、この雰囲気を無視してはならない。
弁護士事務所や証券会社の店舗の壁紙がパステルカラーでは信用問題になるだろうし、託児所や保育園が弁護士事務所のような雰囲気では、母親はそこに子供を預けたいとは思わないだろう。
このことからわかるのは、基本サービスがどんなにすばらしくても、ハードに不備があればお客に信用されないということで、サービスが良いか悪いかを考える以前にハードをよくよく考えなければならないということを示してくれている。
サービス提供者が重要であるにもかかわらず軽視してしまうのは、ハードの構築に対する個別コンセプトの方である。
個別コンセプトを反映しているサービスが、どれほど力強いかを見てみよう。
ディズニーランドでは、個別コンセプトのハードへの反映が完璧に行われている。
各アトラクションで空調機などの機器類は、サービス利用者の視界に絶対に入らないように設計されている。
各ワールドでは地面の色、香り、音楽が全て異なり、各ワールドの境目には両方の音楽が重複しないように必ず滝が設けられている。
スプラッシュマウンテンのクライマックスでは滝から落下して水しぶきが飛び散るが、この水しぶきは、その温度と飛び散る水量が夏場と冬場で異なる。
ディズニーランドはこうして夢の国というコンセプトをハードに反映している。
シアトル系コーヒーの先駆けとして日本に上陸したスターバックスでも、ハードは徹底的にルール化されている。
各店舗は同じような雰囲気を保ちながら、ひとつとして壁面が同じデザインはない。
しかし雰囲気には統一感がある。
家庭でもオフィスでもないサードプレイスであるという個別コンセプトを満たすために全てが考えられ、計算されている。
店舗ではなく、オフィスでもハードに対する個別コンセプトの反映は見られる。
特に北欧系の企業はオフィスデザインに優れているようだが、日本にも個別コンセプトをハードに反映する会社はある。
ある新卒採用に特化した人材のコンサルティングを行っている会社では、一階の入り口を入るとワインセラーがあり、お洒落なイタリアンレストランと見紛うフードスペースがあり、ホテルに入り込んでしまった錯覚を受ける。
別フロアのオフィススペースは全体的にオレンジの光で照らされ、職場の雰囲気と働く気分に対してハードが設計されている。
それぞれの会議室はそれぞれのコンセプトを持ち、雰囲気と気分を変えて会議を行うことができるように作られている。
ハードにこだわる姿は、事業主や経営者の自己満足という場合もある。
それは、「コンセプトを反映し、正しいサービスを提供するため」にこだわりを反映するのではなく、「個人の欲望や見栄を反映」したときに起こってしまう。
しかし、純粋にコンセプトを反映することに集中して細部にこだわるとき(たとえそれが事業主が気乗りしないことであっても)、正しいサービスを提供する完璧な舞台が整えることができる。
ウォルト・ディズニーがはじめてカリフォルニアにディズニーランドを創ったとき、ランド内をくまなく歩き回り、業者に細かく指示と注文を出した。
現場に立会い、コンセプトを反映するための労力を怠らなかった。
(しかしそれでも、炎天下でアスファルトが溶け、婦人のヒールのかかとがめり込んだという逸話もある。もちろん現在ではアスファルトは改善されている)
ジョルジオ・アルマーニは新作のコレクションを行うとき、舞台の雰囲気や具合、照明の位置と影の関係などに関して非常にうるさく口を出す。
これは完璧主義であり、プロであることの表れだと見ることもできるが、サービスを分解して考えたときには、ハードによるサービス構築に力を入れる行為だと理解できる。
個別コンセプトを反映する上で、これらの事例からわかることは、ウォルト・ディズニーにしてもジョルジオ・アルマーニにしても、
ということである。
彼らは直接ハードを作らない。
しかし彼らはサービスを完璧にするために
私たちもその姿勢を取り入れるようにしたい。
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