基本サービスがコンセプトやハードに頼らず、例外的に全く別の現象で生まれることもある。
基本サービスに外れた活動が、却って基本サービスになることがある。
1950年代半ばごろ、札幌の単身赴任者が豚汁に麺を入れて食べるとおいしいという「邪道な」食べ方を行った。味噌ラーメンの発祥である。
しかしそれでは、その商品が豚汁なのかラーメンなのかはっきりしない。
お店は豚汁を提供するお店なのか、ラーメンを提供するお店なのかよくわからなくなってしまう。
はっきりしないものをコンセプトや基本サービスとして決めることはできない。
ところがそのアイディアは研究されてひとつの商品となり、札幌の多くの店で基本サービスとして提供されることに成功した。
味噌ラーメンの専門店が生み出され、70年代には全国に味噌ラーメンが広がった。
特殊なケースだが、基本サービスがコンセプトよりも先行することは現にある。
味噌ラーメン単体としての「商品」が広まっただけなら、それは単なる商品開発でしかない。
たとえばヴェネツィアのハリーズバー発祥のカルパッチョがある。
医者から調理した肉を取ることを禁じられている客の要望に応え、オーナーが機転を利かせて生肉を薄切りにし、マヨネーズとマスタードのソースを網目状にかけて提供したことで、カルパッチョという料理が生まれた。
しかしカルパッチョは単体としての商品として世界に広まり、サービスにはならなかった。
味噌ラーメンはそれ自体をコンセプトに専門店が生まれ、基本サービスとして提供されるようになった。
サービスは新しい価値観を社会に生みだすことがある。
ライフスタイルを変化させる影には必ずサービスがある。
味噌ラーメン提供のサービスは、コンセプトよりも先に物事(商品やニーズ)が動いた場合に、コンセプトとは別のところで基本サービスが決まることがあることを証明している。
しかし、基本サービスがコンセプトよりも先に決まる場合であっても、サービスが実際に提供される前にコンセプトとハードは作られる。
味噌ラーメンの発明によって味噌ラーメン店を展開するとしても、店舗を構える前に味噌ラーメンを提供することはできない。
実務運営上でサービスを提供する場合は、基本サービスの前に必ずハードの構築が必要となる。
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