これまでの展開はサービスの量を増やし、質に変化をもたせることで物理的にサービスを広げる方法だったが、コンセプトを反映したハードと基本サービスを中心にして、接客がそのコンセプトをお客に伝達する心理的な展開がある。
ブランド作りでの接客の役割は、「コンセプトの反映」と「お客の理解」の一致を促すことにある。
そして不一致している部分を一致させるように、お客に正しく伝えることにある。
この作業によって、お客の間に心理的なサービスが展開する。
心理的な展開は時に顧客満足を呼び起こし、売上げを伸ばすことがある。
ではサービスではどうかというと、お客がサービスの正しい知識を自主的に身につけようとしたり、インターネットで検索するなどして積極的に情報を得ようとしたりするようになる。
そうやって正しい知識を積極的に得たお客の中で、今度は自分が知っていることを情報発信し、コミュニティの中心的存在になったり、口コミという手段でブランドを正確に伝達したりする人が出てくる。
サービスのコンセプトと自分自身の理解の何が一致するのかを、お客自身が展開してくれる。
たとえば「エルメスのスカーフ作りは、アイディアから仕上げまでどのスカーフも18ヶ月かけて作られる」などと口コミする。
このような展開は、自分自身と周囲の人の「心理」に対して行われる。
サービスを維持するためには、お客がサービスの効用を正しく理解することが継続提供する上で重要になる。
あるサービスで心理の展開が増えはじめると、まだサービスを利用したことがない人の心の中に、「そのサービスをもっとよく知りたい」という感覚が生まれる。
この感覚は一度もサービス利用したことがない人に対して、自分に効用があるかないかを気づかせてくれる。
つまりブランドは、人びとにそのサービスにどのような効用があるかという正しい判断を与えてくれる。
たとえば「18ヶ月も手間隙かけるスカーフであれば値段が高くてもほしい」、または「スカーフひとつに18ヶ月もかけることに意味を見出せない。高額を払う必要はない」などと理解を促進してくれる。
このようなブランドによるサービスの展開は、
接客者がお客にコンセプトを伝えることによってお客がそれを受け入れ、まず理解する。
そしてそのお客の中に、「積極的にサービスを知ろう」という心理の展開が行われたり、「このブランドのことを友達に伝えよう」という心理の展開が生まれる。
「接客者がコンセプトを伝える」ということは、コンセプトの反映とお客の理解の一致している部分をさらに促すことと、コンセプトとお客の理解の不一致部分に対して正しいコンセプトを伝達することの2つがある。
前者は既にあるブランドを強め、後者は新たにブランドを生み出す。
接客者はまず、サービスとコンセプトについて正しい知識を持ち、どの部分がお客の理解と一致しているかの現在地を知るようにする。
その上で、一致している部分を促し、不一致の部分を補い伝えていくことで、お客にサービスの正しい姿を理解してもらう働きかけを行う。
このときに「お友達に伝えてくださいね」などと、販売促進のセリフを口にしてはいけない。
そんなことをしなくても効用がぴったりと合って、ブランドを支持してくれるお客は自分ができることをできる範囲で行ってくれる。
このような流れを理解してお客に接することが、接客によるブランド展開である。
サービスは、社会活動の中でしか活動することができない。
しかし同時に、社会活動を支える活動として活動している。
サービスがなければ社会は成り立たない。
この意味でサービスは最終的に社会貢献であって、サービスは必要な限り展開することを求められている。
正しく展開して、サービスを提供することが社会貢献に直結している。
同時にブランドを構築し、維持していく必要がある。
ブランドによってサービスを安定させ、展開によってサービス提供を必要とする人に提供し続けていく。
サービス提供という目的に対して、ブランドと展開によってサービスは維持され、提供され続ける。
これが、サービスが継続的に活動し続けるための条件となる。
こうして正しくサービスが提供され続ければ、社会の機能は正しく機能し続ける。
それは何も社会を変革するなどという大それたことではなく、私たち1人1人が社会の一員であるように、サービスも社会を作る一部分として貢献しながら活動しているということである。
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