04.取り入れてはならない3つの視点

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他社のサービスを取り入れたり真似をしたりすると、しくみにコンセプトが反映されなくなってしまう。

サービスが良いことで有名な他者のサービスやオペレーションが魅力的に映るというのはよくわかる。
実際のところ、それを真似し取り入れることはそう難しくはない。
いとも簡単にできてしまうこともある。
ただしうまく機能したという話を聞いたことがない。

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他社でそのオペレーションが上手く機能するのは、サービス提供者がコンセプトに忠実に、そのサービスを利用するお客の求めることに応えることでしくみ作りを行っているからである。
そういった前提を考えずに、表面上のしくみを取り入れてもうまくいかない。

たとえばビジネスホテルはリッツ・カールトンのしくみ――レセプションにレセプションの表示がない、トイレの表示がないが従業員がいち早く気がついて案内する、宿泊者の食べ物の好き嫌いは記録される――などというしくみを取り入れてはいけない。
ビジネスホテルにはビジネスホテルのコンセプトがあり、ハードがあり、基本サービスがある。
そのサービスに最も適したしくみを作らなくては作ったしくみとサービスの組み合わせがバラバラで、お客は不満を感じてしまうことになってしまう。

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他のサービス提供者のしくみを取り入れていいのは、コンセプトとお客の求めるものが限りなく近いときだけにする。
そしてできれば、そのしくみどおりに運営すれば、サービス提供に貢献するとわかっているときだけに限りたい。
しくみの構築はコンセプトの構築とは違って、オリジナリティを追及しない。
全ての目的は効果と結果で、トータルサービスに貢献するしくみは積極的に取り入れて構わない。

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ディナータイムに、行列ができるイタリアンレストランを経営していると想像してほしい。
並んで待っているお客に喜んでもらうため、一杯のワインを無料で提供するというしくみを作る。
するとお客は待ち時間(サービス提供前)に退屈せずにストレスを軽減されて待つことができるようになる。
これはしくみを作る考え方として間違ってはいない。

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しかし、トータルサービスにどのような影響があるかということが深く考えられているとはいえない。
その後提供される基本サービスに対して、その行為がかえって邪魔になったり、足を引っ張ったりする可能性がないかどうかということが考えられていない。

先に飲む一杯のワインが、料理の味のバランスを崩してしまうかもしれない。
お酒に弱い人が席に通されたときには、気分が悪くなるかもしれない。
逆に、大きな声で笑い出して店の雰囲気を壊す可能性も考えることができる。
または、そういったことは杞憂に終わり何事も起こらないかもしれない。

しくみは顧客満足を中心にではなく、

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に考えなくてはならない。
「たぶんだいじょうぶだろう」「多くの人が喜ぶんだからいいじゃないか」という基準で決めてしまうと、それに当てはまらないお客が不満を持つことになる。
もちろん、基本サービスを基準にしても不満を持つお客は出てくるかもしれないけれども、それは提供すると約束したサービスを提供するために、忠実に決めたことであるのでコンセプトを貫いていい。

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顧客満足は「お客が喜ぶこと」を中心に何を行うかを決める。
サービスの提供は「お客が確実にサービス利用すること」によって何を行うかを決める。

顧客満足は良いことを行う気持ちで行動し、サービス提供は必ず提供するという約束で行動する。

サービスで何か(しくみ)を決めるときは、良いことを行いたいという感情よりも、確実にサービスを提供するという約束を優先するようにする。
サービスにとって「良いこと」というのは必ず提供することなので、サービスのしくみ作りも

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する。

しくみを決定するとき、「親切心で行うことが実はサービスをダメにする」という可能性を考えるようにしたい。
さらには「親切心で物事を行う」という考え方ではなく、「サービスを最も良い形で提供する」ことを中心にしくみを作るようにする。

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しくみを作るときに良く考えられていないと、不備が起こってしまうことがある。
たとえば、予想よりもより多くの人がサービスを利用したとき、しくみがサービス提供を阻む壁になることがある。

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小規模なサービスでは、丁寧さや緻密さ、速さ、コミュニケーションなどによってお客が支持することがある。
このようなサービスは、利用者が増えれば増えるほど、提供すると決めたサービスが労力的(手間)にも実際的(時間)にも提供できなくなる可能性が非常に高い。

これまでのしくみをそのまま続ければ、そのサービスを必要とする多くの人にサービスを提供することができなくなってしまい、全員に提供するために手を抜いてしまうと、約束どおりのサービスが提供されなくなってしまう。
これまでは上手く機能してきたしくみが、状況の変化によって突然サービス提供の壁になってしまうことがある。

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このような場合に、コンセプトとトータルサービスを保ちながらサービスを提供し続けるには、しくみを変えなければならない。
しくみの変更で追いつかない場合は、基本サービスの変更を迫られてしまう。
多くの場合基本サービスの水準を下げて多くの人に利用してもらえるように工夫する。
ただ、この方法だとこれまでのお客の信用にヒビが入ってしまう可能性がある。

このような事態が起こらないように、あらかじめトータルサービスを正しく予測して、それに合ったしくみを作ることが大切になる。
発生前の対応と発生後の対応は、労力も、コストも、信用も大きな差となって表れる。
どうしても問題が起こってしまったら、なるべく初期の段階で早めにしくみを改善・変更して、状況に適応するように対策を考えた方がいい。

しくみの変更は基本サービスの変更よりもシンプルに行うことができる。
にもかかわらず、シンプルにできないということがよく起こってしまう。

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できるはずのものをシンプルに行うことができない理由の多くは「これまでこのやり方でうまくいってきたのに、今さら変えることはできない」「これまでうまくやってきたのだから、もう少し様子を見よう」などの保守的、消極的な考え方によるところが大きい。

しくみへのこだわりは、手順やルールを変えたくない個人的な気分の表れで、過去の成功事例にしがみつく人間心理である。
社会心理学でも一貫性の法則として証明されている。

しくみは最初から改善と更新を組み込む必要性があり、それをないがしろにすると、いずれしくみそのものがサービス提供の壁になる。

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となってしまう。
しくみを改善しなくなったとき、最終的にそのサービスはサービス提供を正しく行うことができないという意味で必ずダメになってしまう。

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